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映画ノート

家から2時間『パリ、テキサス』

私にとってのご当地映画は、
家から2時間の距離にあるひなびた町が題名になった『パリ、テキサス』。
サム・シェパードが脚本を手がけ、ヴィム・ヴェンダースがメガホンを取ったロード・ムービーの傑作です。





パリ、テキサス
1984年(西ドイツ・フランス)
原題:
PARIS, TEXAS
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ハリー・ディーン・スタントンナスターシャ・キンスキーオーロール・クレマン
ハンター・カーソンベルンハルト・ビッキ


息子ハンターを弟のもとに残し失踪していた男トラヴィス
テキサスの乾いた砂漠をひた歩くシーンから始まる本作

ラヴィスに何があったのかの謎を残したまま
映画は、4年ぶりに再会を果たした父と息子が
やはり失踪中の母親ジェーンを探し、テキサスを旅するという
ロードムービーの形をとります。





本作で初めて主役を演じるハリー・ディーン・スタントン
記憶を失くすほどの衝撃的な過去を引きずりながら
息子との再会で徐々に自分を取り戻していくトラヴィスを熱演。

この映画、とにかく好きなシーンがたくさんあるんですが
例えば、学校帰りのハンターをトラヴィスが待ち構え、ともに帰宅するシーン。
道路を隔て、父の真似をしながら歩くハンターに向かい
ラヴィスが歩き始めると、そこでライ・クーダーのギターがギュイ~ンと鳴る。
2人の気持ちが重なりあう音 そんな風に感じるほど
ライ・クーダーのギターの音が効果的に使われていて、たまらなく好き。
父子が使うトランシーバーも、2人が自然に協力体制に入るのに役立っていて
小物使いの上手さも印象的ですね。

弟の家に迎えられ、何か役に立つ自分であろうとするのか
鼻歌交じりに洗い物をしたり、家中の靴まで磨いて外に干してしまう。
色とりどりの靴が並ぶ様子は日本的でもあり、流石ヴェンダース

サム・シェパードの脚本は、親子の関係の行き着くところを
映画の進行とともに考え、練り上げたとのこと。
夫婦の間の溝を埋めるのは難しい。
それでも、途切れていた母と子の絆をふたたび結ぶことを見届けるトラヴィス
最後に見せるかすかな笑みに、彼の精一杯の心を感じました。
考えうる限りの最も自然な結末だったかもしれません。
弟夫婦のことを思うと切ないんだけどね。

結局パリは写真でしか出てこないのだけど
途中で見る幸せな家族の8ミリビデオはガルベストンだし
ヒューストンのダウンタウンなど、馴染みの場所が出てきたのは嬉しかったな。
ナスターシャ・キンスキーは輝くばかりの美しさでした。

ちなみにハンターを演じたハンター・カーソンはカレン・ブラックの息子ちゃんだったのね。
今では監督業も手がける大人に成長!
こちら2009年のですが、お母さんと一緒のハンター君。
カレンさん相変わらず怖いです(笑)





★★★★☆