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映画ノート

オスロ、8月31日

前哨戦たけなわ、気になる作品たちが続々ノミネートや受賞を果たしてますが
7日に発表されたボストン・オンライン映画批評家協会賞外国語映画賞受賞、作品トップ10にも選ばれた『Oslo, August 31st』というノルウェー作品が気になったので観てみました。



オスロ、8月31日
2011年(ノルウェー
原題:
Oslo, August 31st
監督:ヨアキム・トリアー
出演:
Anders Danielsen Lie, Hans Olav Brenner, Ingrid Olava 

 

冒頭、石を抱えた青年が川で入水自殺を図るというショッキングなシーンから始まる本作。
青年の名はアンデシュ。結局は未遂に終わり、麻薬依存症のため入所中の施設に戻ると、彼は予定していた就職の面接を受けに故郷オスロに赴く。そこで旧友たちを訪ねるアンデシュだったが・・

ノルウェーで注目される監督の一人ヨアキム・トリアーは、ルイ・マルの『鬼火』の放つ強烈な孤独感に心を動かされた経験からこの映画を作ったのだそうです。


また、自身の故郷であるオスロを舞台にしたのは、同じようにつるんできた仲間が
いつのまにか別の道を歩き、中には麻薬に溺れ道を外してしまうものもいる
その不思議な感覚とやるせなさを「オスロ」を舞台に描くべきだと思ったからだそうです。

『鬼火』からインスパイアーされたということで想像できるでしょうが
本作はアンデシュの最後の2日間を描くもの。



面接の前に元ジャンキー仲間の親友宅を訪ね、自殺をほのめかした後
友人と道で別れるシーンがあります。



馬鹿なことを考えるなよと釘を刺した後、アンデシュの後姿をしばらく見送っいていた友人が、しばらくしてくるりと背を向け自宅へと歩き出す。その直後にアンデシュが友人を振り返るんですね。
そこに背を向け歩く友の姿を見た瞬間、アンデシュの顔がかすかに歪み目に絶望の色が浮かぶのです。おそらくは「この世の誰も自分のことなど気にしていない」と感じたであろうアンデシュ。演技も素晴らしいですが、演出の巧みさにはうなりました。随所に漂う孤独感がたまらないのです。

主演のAnders Danielsen Lieはアンデシュの怒り、悲観、かすかな希望、諦め、受容といった感情の流れを巧みに演じていて見事。
知的な作品だと思いました。

★★★★