しまんちゅシネマ

映画ノート

壊された5つのカメラ



壊された5つのカメラ(2011)パレスチナ/イスラエル/フランス/オランダ
監督:イマード・ブルナート

パレスチナのビリン村で暮らすイマード・ブルナート監督が、四男の成長を記録すると共に、
イスラエル軍に抵抗運動を繰り広げる村の様子を撮り続けたドキュメンタリー。
アカデミードキュメンタリー部門ノミネート作品です。

ビリン村はイスラエルとの国境に位置し、ここでは村人は荒れた土地を耕し、
オリーブなどを植えて生計を立てています。
ところがイスラエルがテロ対策として築き始めた壁は、パレスチナ側に入り込み
ビリン村の農地を分断することになるんですね。
そこで村人は週末にデモをするなどして抗議するんですが、
驚くのは、村人の抵抗に対し、イスラエル国境警備隊催涙弾やゴム弾といった
武力を行使する事。
イマードのカメラは時に、目の前で死んでいく友を映し出します。
撮影を止めろとの警告に従わず、イマード自身が大怪我を負うことも。
弾を受けるなどして壊される度にカメラを換えること5たび。タイトルの所以です。

私がさらに驚いたのは、ビリン村の人々は、壁の建設を妨げるため、小屋を建てて抵抗することはしても、そのほかはほぼ丸腰で、ひたすら「やめて欲しい」と訴えるのみであること。

フィルムの中で、イマードの息子が、「どうしてナイフを持って戦わないの?」と訊くシーンがあるのだけど、「ナイフを使えば傷つく人がいる。人に痛い思いをさせたいのか?」とのイマードの答えが心に残ります。

もし同じことが日本でも起きたら、私たちはどうするでしょうね。
やはり人を傷つけることなど望まないはずだけど、相手は発砲してくるんですよ。
平和が一生続くとは思えなくなった今日この頃、なんだか考えさせられます。



ときにダンスを踊り、いつかは解ってもらえると信じる村人は楽観的過ぎるとも思ってしまうのだけど、飄々と、ある意味楽しみながら、前向きに訴え続ける彼らの力強いこと。
だからこそ、そんな彼らが受けるあまりに不条理な仕打ちに腹が立つのでした。
大きなニュースとして伝わってこなくても、こんなことが今も起こっているんだという現実。
こうしたドキュメンタリーが世界の目に触れることは大きな意味があることですね。
身体を張って記録し続けるイマードの使命感にも感服しました。




★★★★