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映画ノート

25年目の弦楽四重奏




エバート氏のリストから、今日は『25年目の弦楽四重奏』を。
25年目の弦楽四重奏(2012)アメリ
原題:A Late Quartet
監督:ヤーロン・ジルバーマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマンキャサリン・キーナークリストファー・ウォーケン、 マーク・イヴァニール、 イモージェン・プーツ
日本公開:7/6
バイオリンのダニエル、ロバート、ビオラのジュリエット、チェロのピーターは、結成25周年を迎えるフーガ弦楽四重奏団のメンバー。ところがある日、ピーターがパーキンソン病の告知を受け、今季をもって引退すると宣言。動揺を隠せない残りの3人はそれまで抑えてきた感情をあらわにし、メンバー間に不協和音が響きはじめる。(Movie Walkerより)

結成25年を迎えるベテラン音楽家たちが、突然訪れた四重奏団解散の危機に直面する姿を描くヒューマンドラマです。

 メンバーの長ピーターにクリストファー・ウォーケン、第一バイオリンのダニエルにマーク・ウヴァニール、第二バイオリンのロバートにフィリップ・シーモア・ホフマン、ロバートの妻でビオラのジュリエットにキャサリン・キーナー。ピーターが初期のパーキンソン病と診断され引退を宣言。新しいメンバーを迎えることになり、ロバートが、この機に第一バイオリンとパートを交代しながらやるのがいいのではないかと言い出す。長年第二バイオリンに甘んじてきた彼は、自分の実力を正しく評価されていないことに不満を持っていたのでした。
 
 一度頭をもたげたエゴはそれまで内でくすぶっていた負の感情を刺激し、他のメンバーにも波及する。途中何度か「wow」という言葉が発せられるように寝耳に水の衝撃は、やがて夫婦関係や友情、はたまた親子関係にまで波紋を投げかけることになります。25年という月日は単に演奏のキャリアというだけでなく、メンバーが過ごしてきた人生の大半なのです。カルテット(quartet)にはおそらく、四半世紀という意味も込めたのでしょうから、「25年目の~」とした邦題は彼らの人生の重みを反映し的を得てますね。

 明確な解決を示さずにドラマを着地させるところに、賛否があるかもしれません。けれど、バラバラに缶に入れられたお菓子も、缶をコンコンとテーブルに打ちつけることで、きちんと整列し平らになるように、一度衝撃を受けて解決することもある。溜まった鬱憤を吐き出すことで逆に相手を思いやる余裕が生まれることもあるから、人間って不思議ですよね。


 
 巧みな演奏を違和感なく表現した役者陣の演技もよかった。特に近年変人役が多かったウォーケンさんの、温かく威厳に溢れる演技が印象的です。仮面様顔ぼうでもあり、本物のパーキンソン病患者に見えますしね。エンドロールに続く演奏もずっと聴いていたほどに美しく、音楽の素晴らしさも教えてくれる作品です。
ベートーベンのカルテット14番のトリビアも素晴らしい伏線でした。