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映画ノート

ジェフ・ニコルズ監督『MUD -マッド-』




MUD -マッド- (2012)アメリ
原題:Mud
監督/脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:マシュー・マコノヒー/タイ・シェリダン/ジェイコブ・ロフランド/リース・ウィザースプーンサム・シェパードマイケル・シャノン
日本公開:未定
アーカンサスの川岸に暮らす14歳のエリスと親友ネックボーンとボートで向かった小さな島で、木の上に一隻のボートを発見。ボートに人が住んでいる形跡をみつけ驚く二人は、まもなくマッドと名乗る男と遭遇する。

『ショットガン・ストーリーズ(原題)』『テイク・シェルター』のジェフ・ニコルズ監督最新作です。
マシュー・マコノヒー演じるマッドは、ある犯罪を犯し、無人の島で逃亡生活をする男。偶然マッドと遭遇した少年二人は、愛する女(リース・ウィザースプーン)と再会するため、洪水で木の上に打ち上げられたボートを修繕し島を出るというマッドの夢の手助けをすることになる。



 エリスはそもそも女の子大好き少年なんですが、両親が離婚の危機にあり悩んでいる。そんなとき、女との再会を生きる糧にするマッドと出会い、彼を助けようと思う。大人の愛の成就は両親の愛を信じることに通じているのでしょう。ところが、犯罪がらみのマッドの恋は大変な危険を伴うもので、少年二人は図らずもその危険に巻き込まれていくんですねぇ。本作は大人を信じては裏切られ、それでももっと大きな愛に遭遇し成長する少年の物語です。

 マシューはサバイバル暮らしで汚れ果てた男を演じていて、汚い手で缶詰の豆を食べたりの怪演ですが、根はピュアな男で、一途に女を思う姿にはズッキューン。
 
 前2作で主演を務めたマイケル・シャノンは今回は少年の一人ネックボーンの叔父さん役。出番は少ないけれど、両親に代わって少年を愛する優しい男。最後にさり気なく、彼が大きな役割を果たしたのであろうところを見せる監督の粋な計らいに、盟友マイケル・シャノンへのリスペクトを感じ、ニンマリしちゃいました。

 少年たちのアドベンチャーと成長、犯罪者の恋の行方、クライムサスペンスと盛りだくさんながら、どれも上手く絡まっていて、ユーモアもたっぷり。親が子を思う気持ちがストレートに描かれていて本当に素晴らしい。
大好きなサム・シェパードもカッコ良すぎて痺れたしなぁ。
安易なハッピーエンドにせず、少年の成長をリアルに、かつ暖かく見守る視線が凄く優しい映画でした。
これはまちがいなく今年一番。