しまんちゅシネマ

映画ノート

記憶の層を辿って『トランス』の謎を解き明かせ




オブリビオン』のトム・クルーズは消された記憶の中、
かすかに残る思い出のかけらを慈しむように生きていました。
今日は「記憶」「忘却」をキーワードに『トランス』に繋げます。

トランス(2013)アメリカ/イギリス
原題:Trance
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・マカヴォイロザリオ・ドーソンヴァンサン・カッセル
日本公開:2013年10/11
ジェームズ・マカヴォイ演じるサイモンはオークション会場で働く青年。
ある日、ゴヤの絵画が出品されたオークション会場に、強盗団が押し入った。
手順に則り絵画を安全な場所に移動しようとしたサイモンだったが、
すんでのところで強盗団のフランク(ヴァンサン・カッセル)に奪われ、
反撃しようとしたところ、頭を殴られ重症を負う。
一方、絵画を持ち帰ったはずのフランクだったが、鞄から出てきたのは額縁のみ。
退院したサイモンを問い詰めるフランク。しかしサイモンは記憶を失っていた
40億円の絵画はどこに? という話。




冒頭からそこまでを一気に見せるやり方が、スタイリッシュなダニー・ボイルらしくてお見事。
ところが、この映画は失われた記憶を手繰り寄せる手段として、催眠療法(トランス)が用いられるんですが、その過程がちょっと複雑でね。
インセプション』よろしく、サイモンの夢の中に入って記憶を操作するという治療過程に、サイモンの過去のフラッシュバックが挟み込まれるものだから、観ているほうは少し混乱するんですよ。
しかもところどころに「あれ?」なシーンがいっぱい出てくる。
「命を優先させ危険を冒さない」というポリシーに忠実なはずのサイモンが、なぜフランクに反撃したのかとか、途中サイモンを撥ねてしまった女性にサイモンがエリザベスの姿を重ねることなどなど、終盤になって謎が解き明かされるとき、全ては巧妙に仕込まれた伏線だったことに気づくのですけどね。
その中盤の「???」をどうやり過ごすかが映画を楽しむ鍵でしょう。
サイモンは記憶を取り戻すのか、その記憶の奥に隠されていたものは何なのか。

終盤は怒涛の展開に驚くスリリングな仕上がり。
『28日後・・』のダニー・ボイルだから、グロい映像も少し。
ヴァンサンのシーンはちょっとびっくりした後笑っちゃいました。




催眠療法を担当するエリザベスを演じるロザリオ・ドーソンが、マカヴォイやカッセルを食う存在感を見せ、終わってみると、記憶をめぐる複雑なシークエンスに感心します。
というか、催眠療法ってそんなことまで出来るのか!?ってことに一番感心したわけで
ドーソンもこうなったら魔女の域やね(笑)

てことで、次は力技で「魔女」に繋げます