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映画ノート

魔女と呼ばれた少女



『ロード・オブ・セイラム』からは勿論「魔女」繋がりで『魔女と呼ばれた少女』 アフリカ、コンゴを舞台に、
少年兵となった少女の過酷な運命とその逃亡を描く アカデミー外国語映画賞ノミネートのドラマです。
魔女と呼ばれた少女(2012)カナダ 原題:War Witch 監督:キム・グエン 出演:ラシェル・ムワンザ、 アラン・バスティアン、 セルジュ・カニアンダ、 ラルフ・プロスペール ミジンガ・ムウィンガ 日本公開:2013/3/09
コンゴに両親と暮らす主人公の12歳のコモナは、反政府軍に村を襲撃され、
その場で銃で両親を殺すことを命じられてしまう。
その後拉致され、コモナは少年兵として戦うことを余儀なくされる
そんなコモナの前に両親は亡霊となって現れ、
「霊が見える少女」コモナは勝利の女神のように崇められもする。
やがて、少年兵の一人マジシャンと呼ばれる少年に結婚を申し込まれるコモナだったが・・
少年兵となった少女の過酷な運命を描く衝撃作です。

途中マジシャンと呼ばれるアルビノの少年と逃亡
白い雄鶏をゲットし、結婚に至るシーンは幸せに溢れ、
彼らがどこにでもいる普通の少年たちなんだと思い知らされます。
大人に教わりながら、食べ物を収穫し料理したり
私たち現代人が忘れてかけた「自然とともに生きる」暮らしぶりが微笑ましく
映画の中でオアシス的ナ時間を共有できるのですが・・

コモナはやがて、反政府軍に再び拉致され、望まない妊娠をする
同時に彼女は両親を自分の手で殺したことの罪の意識にさいなまれ続けます。

亡霊と言っても、おどろおどろしいものでなく、
泥を塗ったような両親が無言で立っている姿はどこかユーモラスでもあり
やがて生まれてくる子供の存在とともに、それぞれの「命」の形を見せています。

コモナに行動を起こさせたのも、「命」の導き。
新しい命を守るため、コモナはこれからも過酷な運命に立ち向かうのだろうけれど、
命に守られ、命を繋げていくラストシーン
手を差し伸べてくれる大人がいることにも、温かい感動があるんですよね。

ただし、コンゴの内戦の実態を知れば知るほど
ほんわかと感動していてよい作品では決してないのは明らか。
政府に反対する勢力の構成メンバーの多くが誘拐された子供たちであること
彼らは教育を受けることもできないまま、容易に洗脳されてしまうことなど
根の深い問題が横とたわることを考えさせられました。

多くの問題提起とともに、命の大切さを教える優れた映画ですね。
コモナを演じたラシェル・ムワンザの真に迫った演技も素晴らしく
ベルリン映画祭で女優賞を受賞しています。

明日は「逃亡」に繋げます。