しまんちゅシネマ

映画ノート

雨のニューオリンズ





ゾンビマンさんのところで知った『雨のニューオリンズ』を観ました。
シドニー・ポラック監督、ナタリー・ウッドロバート・レッドフォード主演の悲しいドラマです。
雨のニューオリンズ(1965)アメリ
原題:This Property is Condemned
監督:シドニー・ポラック
出演:ナタリー・ウッドロバート・レッドフォード/ケイト・リード/チャールズ・ブロンソン/メアリー・バダム

オーウェンという青年がミシシッピーの小さな町に下りたち、下宿屋スターに宿をとる。
サロンも兼ねた宿は、美しい長女アルバ目当ての客で賑わっていたが経営は厳しく、
母親はアルバを金持ちの初老のオヤジの愛人にすることに躍起になっている。
アルバはハンサムなオーウェンに魅かれるが、オーウェンはつれない。
実は彼は鉄道会社の人員整理をするために派遣された男だった。


恐慌の時代の南部の田舎町を舞台に、下宿屋の娘と都会からやってきた青年の恋を描くドラマです。
古い作品ということもあり、今日はネタばれで書いてますので
これからご覧になるかたはご注意ください。




アルバにナタリー・ウッドオーウェンロバート・レッドフォード
アルバは田舎町を出たいという思いを抱きながら、それは叶わぬことと諦めてもいる。
男たちにちやほやされ、店の看板娘として華やかに過ごすことで
かろうじて自分の存在意義を見出そうとしてるんですね。
しかし、オーウェンとの出会いがそんなアルバに変化をもたらします。

映画の中に登場する重要アイテムがスノードーム。
ガラスボールの中の雪の世界を夢見心地で見つめるアルバに
オーウェンは「そんなのは偽物だ」と言い放つ。
美しいスノーボールは、ごまかしで覆い尽くされたアルバそのもの

一方、オーウェンもアルバに「仕事は楽しいのか」と聞かれ動揺する。
こうして心を裸にされたもの同士が、共感し合い、惹かれていく過程が秀逸です。

一度は誤解から喧嘩別れをするものの、アルバがオーウェンを追ってニューオリンズに行く形で二人は再会する。ひととき、鳥のように愛し合う二人が微笑ましい。

二人の恋を描くだけならばタイトルは邦題のように「雨のニューオリンズ」でいいはずなのに
なぜ原題が「This Property is Condemned 」というムードもかけらもないものなのかと考えあぐねました。
This Property is Condemned とは、差し押さえのあった家などに使われる法律上の文言で
本作では、数年後、廃墟となったアルバの家に張り紙された紙に書かれていました。

そう、この映画が興味深いのは、アルバの恋の物語を、
数年後に妹のウィリーがトムという少年に語る回想の形をとっていること。



ウィリーは年の頃はまだ13、4なのに、差し押さえられた家に、法律の目をくぐって一人隠れ住んでるんですね。遺品となったアルバのドレスを着て線路を歩くホームレス状態のウィリーはあまりにも悲しい。
それでもウィリーがそこにい続けるのは何故か。
アルバの恋は結局は悲劇に終わり、一家を離散させたけれど、そこには確かに自分の殻を破り
スノードームから飛び出したアルバがいた。ウィリーはそんな姉に憧れてもいたのでしょう。
線路はニューオリンズへと続くもの。
ウィリーの存在により、アルバの悲恋はかつてあった華やかな時代への郷愁とともに、いとしく蘇る。
それは『タイタニック』のラストシーンにも似た感慨をもたらすのです。

息も詰るような閉塞感を演じきったナタリー・ウッドが凄くよかった。

共同脚本にフランシス・フォード・コッポラ
チャールズ・ブロンソンが母親の愛人ながらアルバに思いを寄せるというちょっと変わった役で登場します。


しみじみとして、いい映画でした。ゾンビマンさんに感謝です。