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映画ノート

ガリポリに散った青春『誓い』




さて「走りが印象的な映画」シリーズ
今日はピーター・ウィアー監督による戦争青春ドラマ『誓い』です。
誓い(1981)オーストラリア
原題:Gallipoli
監督:ピーター・ウィアー
出演:メル・ギブソン/マーク・リー/ビル・カー/ロバート・グラブ
第一次世界大戦の時代、オーストラリア奥地の村に暮らす18歳のアーチー(マーク・リー)は、
戦地で戦うことを夢見、おじとともにランニングの訓練に励んでいた。
しかし年が足りないことから入隊を却下されるアーチー。
そんな彼にアスレチックカーニバルで知り合ったフランク(メル・ギブソン)は、「歳をごまかし、ほかの場所で入隊テストを受けることは可能」と悪知恵を授ける。かくしてフランクとアーチーの長い旅が始まる。

原題のガリポリというのは現トルコの港町の地名、第一次世界大戦時、英国に率いられたオーストラリア、ニュージーランドの連合軍が、オスマン帝国軍を相手に激戦を繰り広げた場所です。


連合軍を支えたのが、アーチーらのような志願兵だったんですね。
前半はアーチーとフランクのバディものロードムービーの趣。
徒競走で出会った、足に自信のある二人は、ことあるごとに走ります。
貨物列車を追いかけ、砂漠でらくだを追いかけ、エジプトでの再会を喜びピラミッドを目指し競争したり。
冒頭のオーストラリアの広大な原野を舞台に馬と素足のレースに始まり、数々の走りの舞台になる自然の美しさも印象的。このあたり、監督の最新作『ウェイバック -6500Km-』に通じるものがあります。




『マッド・マックス』の頃の若きメル・ギブソンが演じるフランクは、おちゃめなキャラで彼の周囲は明るい笑いに溢れている。ひたむきな愛国心を抱く純粋な青年アーチーとは間逆な性格ながら、互いにないものを持つ相手を尊敬し、バディ関係を築いていくさまがすがすがしい。
しかし、爽やかな青春物語な展開に、これが戦争映画であることを忘れかけた頃、
遠くで大砲の音が聞こえ始めハッとする。銃砲音と振動は徐々に強さを増し、
気づけば大迫力の最前線に放り込まれているんですよ。その演出のうまいこと。



「走り」に始まり、「走り」で終わる本作
フランクが戦地を死に物狂いで走る姿に胸が締め付けられます。
戦争の悲劇を青春の光と対比させた秀作でした。