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映画ノート

恐怖ノ黒洋館




ハロウィンホラー祭を地味に開催してます
今日はカナダの新人監督ロドリゴ・グディノによるオカルトホラー作品『恐怖ノ黒洋館』。

恐怖ノ黒洋館 (2012)カナダ
原題:The Last Will and Testament of Rosalind Leigh
監督:ロドリゴ・グディーニョ
出演:アーロン・プール、 ヴァネッサ・レッドグレーヴ、 ジュリアン・リッチングス、 スティーヴン・マッキンタイア
日本公開:2013/10/26

骨董収集家のレオンが母ロザリンドの遺した実家を訪れる。
父親が自殺し、母親を嫌い、若くして家を飛び出したレオンだったが
母親から受けた虐待の記憶は今もレオンの心に影を落としている。
歩いて回るうち、レオンは屋敷内に不穏な気配を感じ・・





シッチェス映画祭 ファンタスティックセレクション2013」として公開中の作品です。
登場するのはレオン(アーロン・プール)のみ
死んだ母親の声がボイスオーバーの形で入り、心理療法士兼恋人との電話の会話で、
レオンの過去と母親との関係を明かすつくりです。
私たちはレオンとともに、母のカルト的な信仰について知ることになり、
さまざまな怪現象も目撃することになるんですが・・




とにかくこれ、いろいろに凝ってて奥が深い。
たとえば「ナイフを落とせば男性、スプーンを落とせば女性の訪問者がある。
フォークを落とせばどちらでもない」と書いた額があって
フォークを落とした直後に隣人が戸を叩く。

カメラは隣人の姿を映さず、男でも女でもないとしたらこいつは何だという話になります。
オカマとか言いっこなしねw
さらに隣人は「森には病んだ獣が出るから注意しろ」と警告する。
「家に入っていいか」と言う隣人にレオンは「後で」と言うんですが
彼は後でえらい目に遭うんですよね。

隣人は何者で、彼の言う獣とは?等、それぞれに込められた意味を考えるのも楽しい。
台詞や家の中の小物に謎を解く鍵が仕込まれてるから、ミステリーファンにも楽しめると思います。
ただし、その解釈は見るもので異なるでしょうね。
そもそもレオンが実際に屋敷を訪れたのかというところさえ怪しくなる。

確かなのは、レオンを自分の信仰に導こうとして叶わなかった母親が、そのことを悔い
寂しく死んでいったという事実。
監督の実体験が元になっているということなので、レオンは勿論監督自身でしょう。
おそらくは母親と疎遠であったことを悔やむ監督の、母親への追悼の意が込められているのかと思います。

生きているうちに分かり合えなかった親子の、悲しい悲しい物語ですね。

ヴァネッサ・レッドグレーヴの悲しみを湛えたボイスオーバーがミステリーを引っ張り
オカルト風味のゴーストストーリーに深みを与えています。さすが大女優。