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映画ノート

オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~




賞関係、今日はゴッサム賞でロバート・レッドフォードが男優賞にノミネートの『オール・イズ・ロスト~最後の手紙』を観てきました。

オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~(2013)アメリ
原題:All is lost
監督:J・C・チャンダー
出演:ロバート・レッドフォード
日本公開:2014/3
ロバート・レッドフォードがインド洋を単独航海中遭難した、名もなき男を演じる海洋ヒューマン・アドベンチャーです。

「あらゆる努力をしたけどだめだったよ。全てをなくしてしまった」
そんなことを綴った最後の手紙を書いたあと、画面は8日前に戻ります。

家具をしつられた自家用ヨットで、水漏れに気づき目覚めた男(レッドフォード)は
ヨットが漂流コンテナにぶつかり船体に穴が開いてしまったことを知る。
そこから始まる、男の壮絶なサバイバルを描く作品です。
監督は初監督作品『マージン・コール』がアカデミー賞脚本賞にノミネートされるなど高い評価を得たJ・C・チャンドラー。レッドフォードとはプレミア上映されたサンダンス映画祭でつながりがあったんですね。

出演者はレッドフォード一人。天下のレッドフォードは独り言も言わないw
台詞により物語を補足することなしに、106分にスリルと希望と絶望感を織り交ぜたチャンドラーは只者じゃない。




 レッドフォード役に名前はありません。
分かるのはしたためた手紙から、彼には家族があるのだろうということ。
海を知り尽くしたプロには、気づけば船に穴が開いていたとか、気づけば嵐だったなんて部分に不満を感じるようだけど、それも主人公のバックグラウンドとして想像できる部分。決してスーパープロのヨット乗りでないかもしれないけれど、少なくとも次に何をすべきかを判断し、冷静に行動する知力を備えた男だということもわかる。だからこそ、彼の行動に一喜一憂し、画面から目が離せないのです。

 台詞がないことで、船を打つ波の音や、窓を叩く雨の音、帆のはためきなど、自然の音が否が応でもクローズアップされますね。見ている私たちも恐怖を共有し、同時に、対峙すべき自然の偉大さを思い知ることにもなります。

70代中盤という歳でこの役を演じきったレッドフォードもまた驚異的です。
ランナウェイ』では風貌の劣化を感じたけれど、本作ではいつしか精悍で美しいレッドフォードが蘇っていた。役者としても凄い人なんだと改めて感じたし、体力的にも厳しかったであろうこの役に挑む役者魂にも感服。

 最後の最後のシーンで、後ろの席のご婦人が喉から搾り出すような声を上げ
同時に私も涙ポロポロ・・

 CG満載のエンタメアクション映画がたくさん作られる中、低予算で作られるインディーズ映画はその対極にあるもの。でも低予算でもこんなに大きな人間力に感動する秀作が作れるんですよね。
レッドフォード主催のサンダンスから新鋭が生まれ、映画界に新たな風を吹き込むことを期待してやまないし、インディーズ映画を支援するレッドフォードの志をリスペクトしたいと思いました。

トラックバック一覧

  1. 1. たった1人で、

    • [笑う社会人の生活]
    • September 30, 2014 08:05
    • 17日のことですが、映画「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」を鑑賞しました。 自家製ヨットでインド洋を航海中の男。 突然、海上の浮遊物がヨットに衝突したことから浸水や無線のトラブル、さらには天候悪化に見舞われ・・・ 海でたった1人の遭難劇、ただ それだ...