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映画ノート

ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-




2012年のイタリア映画祭で『シュン・リーと詩人』というタイトルで上映されたイタリア・フランス合作映画。
異国の地で孤独を共有しあう男女の交流を描くヒューマンドラマです。

ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-(2011)イタリア/フランス
原題:Io sono Li
監督:アンドレア・セグレ
出演:チャオ・タオ/ ラデ・シェルベッジア / マルコ・パオリーニ/ ロベルト・チトラン/ ジュゼッペ・バッティストン
日本公開:2013/3・16





イタリアの港町キオッジャ。
小さなヴェニスと呼ばれるこの地の、蒼い海、そこにぽっかり浮かぶ小屋や、向こうに連なる雪を頂いたブルーグレイの高い山々等、美しい異国の風景にまず魅了されます。
この町の海辺の小さなバーにやってくるのが中国人女性のシュン・リー(チャオ・タオ)。
いつかは、わが子を呼び寄せ一緒に暮らすことを夢見る彼女は、言葉もおぼつかないながら
バーに集う猟師たちとゆっくりと馴染んでいきます。
常連客のひとり、詩人と呼ばれるベーピ( ラデ・シェルベッジア )はユーゴスラビアからの移民ということもあり間もなく2人は心を通わせていくのですが・・・。




これは良かった~。

シュン・リーを演じるチャオ・タオはヴェネチアで女優賞を獲ったり、この映画でもイタリアの映画賞で主演女優賞を獲得するなど、実力のある女優さんらしいですね。
静かな演技ながら、健気に生きるヒロインの孤独や心細さまで表現していて本当にうまい。
シュン・リーと詩人は親子とも恋人とも違う、あえて言うなら同士の間柄で
異国に生きる孤独を共有し、肩を寄せあうのですよね。
その様子が潟の景色に溶け込むように穏やかで、優しくて、
得もいえぬ安らぎを感じてしまいました。

シュン・リーを派遣する組織が何なのか等、詳細は説明されないけど
確かジェイソン・ステイサムの映画にもこんなギャングみたいなのが出てきたなぁ。
労働者から搾り取るだけ搾り取るヤクザまがいの仕事かしらと想像するけれど、そんな組織にでも夢を託さざるを得ない人がいるという現実。夢を諦め姿を消す者には、どんな仕打ちが待っているのだろうか。そんあ不安が頭を掠めます。さり気に問題提示も盛り込むのは、さすがにドキュメンタリー出身の監督と言うところでしょうか。

高潮の時には町中が水浸しになるのに、みんな普段と変わりないように暮らす 不思議
小さなバーに集う男たちを描くことで、港町の男たちの人生までも映し出すところも巧みです。

潟にとどまり、海に出て行かない波もある とは
遠い祖国に想いを馳せながらも、異国の地に骨を埋める移民たちを指すのでしょうか。

切ないけれど希望もあって、穏やかで美しい。
einhornさんありがとう。ドンピシャに好きな作品でした!