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映画ノート

ビザンチウム




ヨーロッパシリーズ 今日はニール・ジョーダン監督によるヴァンパイア映画『ビザンチウム』です。
ビザンチウム(2012)イギリス・アイルランド
原題:Byzantium
監督:ニール・ジョーダン
出演:ジェマ・アータートンシアーシャ・ローナンサム・ライリージョニー・リー・ミラーケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/ ダニエル・メイズ
日本公開:2013/9/20

ニール・ジョーダン監督といえば、美しい男たちが吸血鬼を演じた『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を思い出すところですが、今回の主人公は女性。
シアーシャ・ローナン演じる16歳のエレノアとジェマ・アタートン演じるクララ、二人の関係を紐解きながら、彼ら背負う壮絶な運命を描きだすファンタジー・ホラーです。

エレノア(ローナン)はヴァンパイアではあるけれど、自分の運命を悲観している。
血を求めるのも、死を間近にしそのときがきた者のみに、安らかな死へと導く役割を担う形です。
ご老人の血・・ま、まずそうなんだが(汗)
一方エレノアは、娼婦をしながら邪魔者を消す手段として殺人を繰り返す。
そのたびに二人は住む場所を変える。こうして長い長いときを過ごしているのです。



映画は、ある海辺にたどり着いたエレノアが、保養地の施設でウェイターをするフランク(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と出会うところから動き始めます。エレノアの弾く美しいピアノに魅せられたフランクが、「どのくらい練習したの?」と訊く。するとエレノアは「200年」と答えるんですね(笑)
クララを嫌い、自分の運命を悲観するエレノアは、全て明かすことで安らぎが得られるのではと思い始めているのでした。




ヴァンパイア人生がどうやって始まったのかを描いていて斬新な作品でした。
200年前にさかのぼる場面も、クラシックな音楽とともに荘厳で美しい。
トーンを落とした色彩の中描かれる血の赤も印象的ですが、ヴァンパイア誕生を象徴する血の滝のシーンは、しまいにはしつこくてちょっと笑ったがな(笑)招かれなければドアから入れないというお約束もしっかり描かれていてニヤり。でもそれ3回も繰り返すのもやっぱりしつこい。もはや繰り返しの面白さを狙ったコメディかな(笑) 確かにウケましたw



ヴァンパイアものながら、おどろおどろしいだけのホラーにはなっておらず、シアーシャの深いグリーンの瞳が映画全体の憂いを象徴するかのごとく、モンスターとして生きる悲しみに溢れています。それでも陰鬱なだけに終わらないのは、人は愛のために過酷な運命を背負い、愛のために命を繋ぐのだという描き方にあるでしょうね。重厚なヴァンパイア映画に仕上げたジョーダン監督はさすが。