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映画ノート

【映画】アイルランド移民の心を描く『ブルックリン』

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ブルックリン
(2015)アイルランド/イギリス/カナダ
監督:ジョン・クローリー
脚本:ニック・ホービィ
出演:シアーシャ・ローナン /  ドーナル・グリーソン/ エモリー・コーエン / ジム・ブロードベント/ ジュリー・ウォルターズ 
日本公開:2016/7
 【あらすじ
姉の勧めでアイルランドからニューヨークへ移住してきたエイリシュ。ホームシックに陥ったがイタリア系移民のトミーとの恋をきっかけに変わっていく。そんなある日、突然の悲報が届き・・。


【感想
アフター・オスカー特集
緑色のコスチュームを着ることで有名なアイルランドのお祭りであるセント・パトリック・デイの昨日
アイルランドからの移民のお話である『ブルックリン』を観ました。

作品賞とシアーシャ・ローナンが主演女優賞にノミネートされた本作
この時代の移民の話が大好きな私にはたまらない映画でしたね。
作品賞の8本では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『レヴェナント』と並んで3トップ。
しっくり度からいくとベストかもしれない。


50年代、シアーシャ演じるエイリシュは姉の勧めでアイルランドからブルックリンにやってきます。
ブルックリンには80年代に多くのアイルランド人が飢餓を逃れるため移住しており、アイルランド系のコミュニティが出来上がっています。
90年代に入っても仕事の機会に恵まれないアイルランド人女性は、夢を求めてアメリカに移民したんですね。イタリアなど他のヨーロッパからの移民に比べて英語を話せたのは有利だったんでしょう。
デパートの売り子として仕事を始めたエイリシュも、最初は接客にも環境にも馴染めずホームシックにもかかります。

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そんなエイリシュが変わるきっかけになるのがイタリアからの移民であるトミーとの出会い。
映画はエイリシュの変化とともに、エイリシュが共同生活を送るボーディングハウスや
精神面をサポートする教会など、移民を支えるコミュニティの実体を見せてくれるのが興味深い。

エイリシュが教会の勧めでボランティアに参加するアイルランドからの移民を招いてのクリスマス会の会場で
エイリシュより一世代前の移民たちが、アイルランド民謡と思われる美しい曲を聴き涙を浮かべるシーンが好き。
素朴な歌声も本当に美しくてね。多くの移民たちは二度と故郷の土を踏むことなく、異国の地で懸命に生きている。
彼らの郷愁が胸に迫る名シーンでした。

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共演にドーナル・グリーソン。
私の知る限り彼は今年のオスカーにノミネートされた作品の4つに出てます。
いつの間にかカッコよくなって、父超えの名優になりそう。
それだけに最後のエイリシュの選択は意外でもあったんだけど、本作が移民の物語と思えば納得。

監督は『ダブリン上等!』『Boy A』のアイルランド出身ジョン・クローリー
シアーシャ自身もアイルランド出身ということで、この役にかける思いは大きかったでしょうね。

故郷を離れたもの同士の繋がりや生きる覚悟など、移民者の心と歴史を知ることが出来る名作。
今年イチオシだな。