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映画ノート

『ブルージャスミン』:ケイト・ブランシェットの主演女優賞なるか





オスカー特集
今日ウディ・アレン監督のシニカルドラマ『ブルージャスミン』をDVD鑑賞しました。


ブルージャスミン(2013)アメリ
原題:Blue Jasmine
監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェットアレック・ボールドウィンサリー・ホーキンス/ルイス・C・K / ボビー・カナヴェイル/ アンドリュー・ダイス・クレイ/ ピーター・サースガードマイケル・スタールバーグ
日本公開:2014・5・10
ニューヨークでのセレブ生活が崩壊したジャスミンは、サンフランシスコに住む妹ジンジャーのアパートを訪ね、一緒に暮らし始める。全て失いお金もないジャスミンだが、簡単な仕事につくことはプライドが許さない。
自分に合ったインテリアの資格を得るため、まずはコンピューターの学校に通い始めるのだが・・

ケイト・ブランシェットがヒロイン ジャスミンを演じ、オスカー前哨戦を独走中という一本。



 
破産し全てを失ったにも拘わらず、ブランド品を身にまとい、ファーストクラスに乗るジャスミン
スーパー勤めの妹の世話になりながら、妹やその恋人までも見下すいけ好かない女です。
映画は、夫ハル(アレック・ボールドウィン)とのニューヨークでのセレブな暮らしぶりをフラッシュバックで見せつつ、ジャスミンの転落生活を描き出すというもの。

オスカー主演女優賞にノミネートケイト・ブランシェットが評判どおり素晴らしい。
ハルとの新婚時代や、新しい恋人にときめく様子はやたら可愛らくて、彼女いくつだっけ?と確認したくなるほど。一方、精神的に破綻したジャスミンは悲しいまでに凄まじい。いけ好かないぶりは笑ってしまうほど。



しかし、ジャスミンはどうしてこんな女になったのか?
実はジャスミンは妹とは血の繋がりがない。二人とも養子として育てられたんですね。
おそらくは里親の愛情を得るために、常に努力したであろうジャスミンは、容姿端麗学業優秀なパーフェクトな女性に成長。夫に見初められセレブな暮らしを謳歌するわけですが、ジャスミンの価値観を決定付けるのに、この養子として育ったという背景はキーになる部分だと思います。

ジャスミンが培ってきた価値観は間違えてるんだけど、それが愛を得るための手段であったことを思うと、なんだか切ないんですよね。




同じく養子で育った妹ジンジャーにサリー・ホーキンス
容姿も10人並のジンジャーは、美しいジャスミンにおよそ勝ち目がない。
「遺伝子だから」と諦め、自分に見合った暮らしをし、自分に見合った恋人を選ぶジンジャー。
両極端な姉妹を対比させることで、価値観や本当の幸せについて考えさせる作りもうまい。
ジンジャーはジャスミンにあることで恨みも持っているのだけど、血の繋がりはないながら、二人は唯一の身内でもあるんですね。少しだらしないながら、ジャスミンへの複雑な愛情も滲ませるジンジャーを演じるサリー・ホーキンスの演技も絶妙で、オスカー助演女優賞にノミネートされています。

98分という時間にこれだけの人生模様を盛り込むウディ・アレンの脚本はまさに職人技。
会話中のキーワードから、過去にフラッシュバックしていく切り替えも巧妙で
これまたオスカー脚本賞にノミネートです。

シニカルで辛らつだけど、底に流れるのは悲しいまでの愛。
観終わって切なさに泣いてしまったけれど、とっても面白い作品でした。
ケイト・ブランシェットの主演女優賞に異議なしです。