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映画ノート

【映画】 ライク・サムワン・イン・ラブ



ライク・サムワン・イン・ラブ(2012)フランス/日本
原題:Like Someone in Love
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:奥野匡/ 高梨臨加瀬亮/でんでん/森レイ子/ 大堀こういち/ 辰巳智秋
日本公開:
イランのアッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に撮った日本/フランス共作の一本。

恋人のノリアキ(加瀬亮)と電話で会話中の明子高梨臨)。
友達と一緒だという明子の言葉を信じず、居場所を追求するノリアキ。無理もない。
明子はデートクラブでバイト中で、その夜も支配人(でんでん)に指示された顧客奥野匡)のもとへとタクシーを走らせるのだった。

ライク・サムワン・イン・ラブとはよく言ったもので
元大学教授のタカシ、デルヘリ嬢の明子、その恋人のノリアキと
3人それぞれに愛を欲しているものの、一方通行なんですよね。



曖昧なままに付き合ったり、安易に風俗行に足を突っ込む明子は限りなくいまどきの若者
独居老人である80代のタカシが、仕事もそっちのけにデリバリ嬢にのめり込み
結局振り回されてしまうのは滑稽だけど、彼の孤独を思うと切実で悲しい
相手の気持ちはそっちのけに明子との結婚を切望するノリアキは、ストーカー系恋愛の極みでもあり
最後の5分まで淡々とも言える静かなやり取りが続くのに不思議に退屈しない。
そればかりか三人の関係が不思議な緊張を生む異色ドラマでした。

感心するのは日本人らしさをイラン人であるアッバス監督が見事に捉えている点。
日本の今とカルチャーを切り取りつつ、都会の孤独を際出たせているのが見事。


一番映画的だったのは、明子とおばあちゃんのエピソードかな。
高田みづえの「硝子坂」が流れるタクシーで、涙をぬぐって赤いルージュを引く明子がかっこいい。

タカシ役の奥野さんは84歳なのに運転するシーンが大半でお疲れ様でした。
ベテランなのに素人のような自然さでした。

加瀬さんは怖い役を演じても上手いね。