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映画ノート

【映画】 ハミングバード




ハミングバード(2012)イギリス
原題:Hummingbird
監督:スティーヴン・ナイト
出演:ジェイソン・ステイサム/アガタ・ブゼク/ヴィッキー・マクルア
日本公開:公開中

ジェイソン・ステイサム主演のクライム・アクションドラマです。

ジョセフ・スミスは戦場でのある事件から逃走し、ホームレスにまで落ちぶれた元特殊部隊軍曹。
唯一心を通わせていたホームレス仲間の少女を拉致されたことから、ジョセフは裏社会を利用し、少女の敵を討とうとする・・
と、ストーリーを書くといつものジェイソン映画みたいだけど、本作はロンドンを舞台にしたイギリス映画で、しかも監督のスティーヴン・ナイトが『堕天使のパスポート』や『イースタンプロミス』の脚本家とあって、社会派の問題を絡めた渋い作品に仕上がってます。


ジェイソン演じるジョセフはアフガニスタンで起きたあることから心に傷を抱え続けている。
彼は追っ手から逃げる途中偶然入った居住者長期不在の高級マンションに住み着き、別人に成りすまし拉致された少女の仇討ちの機会を狙うんですが、身なりが変わっても彼の中にある罪の意識は変わらない。
それでも彼は少女に手をかけた悪人を放ってはおけず、さらなる闇を抱え込もうとしている。
ジョセフの正義である一方で、それもまた許されない罪であることもわかっているのに・・。

もう、罪と正義の狭間で苦しむジェイソンが切な愛しくてね。
今回アクションシーンは控えめに演技で勝負し、涙まで見せてくれるジェイソンにキュンとした。

他人の家に住み、クレジットカードまで使ったらもっと早くに足がつくだろ とかのツッコミどころはあります。
最初は自分の娘を放置してることにも違和感があったのだけど、後になって彼はどうしても自分を許せず親として向かい合うことができなかったのだろうと気づいた。

アフガニスタンの戦場で使われている無人偵察機ハミングバードと呼ぶらしい。
あえてタイトルに使っているのは、それが単にジョセフの罪を暴く機械というだけでなく
真実を問いただすもの、ジョセフ自身の心の鏡でもあるからでしょうね。



ジョセフが好きになるシスターも暗い過去を持つ移民女性でしたが、彼女もまた自分の罪とともに生きることを選択する。彼女がまたかっこよくてね。でも罪を受け入れることなしに心の平安はありえない。
日本には「お天道様が見ている」という言葉があるけれど、ハミングバードも、最後にジョセフを映し出すロンドンの監視カメラも、「神の目」と言えるのかもしれませんね。

はっきり言ってジョセフはたくさんの過ちを犯しているのに愛しく感じるのは
『レスラー』に通じる男の美学に共鳴するからからだろうか。
人の恩義は決して忘れないところなどは任侠的というのか日本人の心に近いというのか
邦画をあまり見てなくて言うのはおかしいけど、どこか日本映画の赴きもある作品でしたね。

あまりにも強すぎるジェイソンが、酔っ払って力を弱めていないと、自分は頑強な殺人マシーンだからとかいうシーンはちょっとウケたw
やっぱり好きだよ。ジェイソン。