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映画ノート

【映画】 リスボンに誘われて



リスボンに誘われて(2013)ドイツ
原題:Night Train to Lisbon
監督:ビレ・アウグスト
出演:ジェレミー・アイアンズ/ ジャック・ヒューストン/シャーロット・ランプリングメラニー・ロランマルティナ・ゲデック / アウグスト・ディール / ブルーノ・ガンツレナ・オリンクリストファー・リー
日本公開:2014/9 リスボンに誘われて [DVD]

何年かに一本、泣きたくなるほど好きな映画に出会うことがある。これは私にとってそんな一本です。
パスカル・メルシエの世界的ベストセラー「リスボンへの夜行列車」の映画化である本作は、スイスで退屈な毎日を過ごす高校教師である主人公が、一冊の本に出会うところから始まります。
ページをめくるたびに何かが彼の魂を揺り動かす。
それが何かを知るため、彼はリスボン行きの夜行列車に飛び乗るのです。

主人公ライムントを演じるのはジェレミー・アイアンズ
妻と離婚し一人暮らしの彼の味気ない日常は、ゴミ箱から拾い上げた出がらしのティーバックでお茶を飲む様子にも象徴されています。そんな彼が仕事も放り出しリスボンで紐解いたのは、著者アマデウの半生。
映画は過去と現代を交錯させ、アマデウの生きた時代を浮かび上がらせます。
70年代、ポルトガル最後の独裁政権下に生きたアマデウは医者であると同時に革命家だったことがわかってきます。その生き様にライムントは自分の人生のなんと平凡で退屈であるかを思い知ることになるのですが、この映画が面白いのはそれだけに留まりません。
ライムントはリスボンでいくつかの閉ざされた扉に出くわす。アマデウの人生を紐解くジャーニーは、やがてこの扉を開く役割を果たすことになり、その様子が静かな感動をもたらすんですよね。




思えばこの映画にはたくさんの偶然が描かれます。
赤いコートの女性と出会ったことも、彼女のポケットにアマデウの本が入っていたことも、列車の出発時刻が15分後に迫っていたことも、リスボンで眼鏡を壊してしまうことも 全部偶然。
でも運命論的に見ると、全ての偶然が必然だと思えます。
ライムントがこの本に惹かれたのは、おそらく彼の中で何かを変えたい想いがあったからでしょう。
人生にはさまざまな出会いがあり、気づかずに見過ごしてしまうこともあるけれど
思い切って列車に飛び乗ってみたら人生変わるかもしれない。
中流れる音楽も美しく、久々に「好きで好きでたまらない」1本でした。




監督のビレ・アウグストは、2度のパルムドールを受賞したデンマークの名監督とのこと。
そんなことも知らずに観たのだけど、なるほど上手いわけだ。
アマデウを演じるのはジャック・ヒューストン、彼を愛する革命家女性にメラニー・ロラン
アマデウの妹にシャーロット・ランプリング、アマデウの親友ジャックに ブルーノ・ガンツ等々キャストも豪華でした。
ポルトガルサラザール政権の末期について少し知っておくとより分かりやすいかもしれません。
日本公開は9月です。