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映画ノート

【映画】『荒野の千鳥足』:凄まじいほどに不快(byスコセッシ)




世界が驚愕する日本未公開の映画を上映しようという“初公開!世界のどす黒い危険な闇映画”なる企画があるようで、その第一弾『荒野の千鳥足』が9月に公開されるということで観てみました。
カンヌでお目見えし、ヨーロッパ各地で上映された後、フィルムの所在がわからなくなり長い間幻の名作と言われていたらしいのですが、2004年にようやく発見され復元の運びになったのだとか。
荒野の千鳥足(1971)オーストラリア/アメリ
原題:Wake in Fright
監督:テッド・コッチェフ
出演:ゲイリー・ボンド/ドナルド・プレザンス/チップス・ラファティ/ ジャック・トンプソン
日本公開:2014/9/27
 
オーストラリア。砂煙の舞う黄色い大地、灼熱の太陽、目の周りを飛びかう蝿、額ににじむ汗・・
ご丁寧にサントラまでもが蝿の羽音を思わせます。
そんな中、学校教師のジョン・グラントは年末の休暇をシドニーで過ごすべく列車に乗り込みます。
途中、砂漠地帯の町に一泊することになるのですが・・・



一夜を過ごすために立ち寄った砂漠の町で破滅に向かう若い学校教師の姿を描く異色作です。
巻き毛の金髪、ちょっとハンサムで教養もあるグラント(ゲイリー・ボンド)は、寂れた砂漠の町では異色の存在であり『アラビアのロレンス』を思い起こさせます。
そんな主人公がトランジットの地で酒、ギャンブル、狩りを経験するうち、およそ文明からかけ離れた原始的な欲望に翻弄されることになります。
地元住民からの執拗な誘惑は、美しいものをよどんだ世界へと引き込むかのようで
主人公には罠にはめられたような不憫さも感じるのだけど、
結局は彼の中にある野蛮なものが目を覚ましたということなんでしょうね。

カンガルー狩りの残忍さは観るのをやめようと思うほど強烈です。
それでも画面から目が離せなかったことには自分の残酷さも感じるところだけど
この映画には野蛮さの中に人の本質があり、他人事では済まされないから引き込まれるんですよね。
しかし、画面を眺めている観客と違い、実際に自分の蛮性が暴かれる立場となったら
これはつらいでしょう。
自分に対峙することになる主人公のその後の行動も緊張感たっぷり。





共演にドナルド・プレザンス
医者でありながら文明を捨て、あばら屋に暮らすプレザンスは、本能の欲するままに生きる男。
主人公グラントと合わせ鏡のような描き方だったのが印象的。

監督は『ランボー』のテッド・コッチェフ
ギャンブルや狩りの高揚感を見せるカメラワークも秀逸で
カンガルーを追いかけるシーンのスピード感と臨場感はヤバイ。
スコセッシに「凄まじいまでに不快」と言わしめた本作は
ホラーに近い、これぞ滝汗の衝撃作でした。

ってことで、少々サボり癖がついちゃってますが、明日からまた滝汗シリーズに戻ります。