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映画ノート

【映画】 『刑事グラハム/凍りついた欲望』:「滝汗!サスペンス映画100」制覇シリーズ




滝汗シリーズまだまだ続きます。
今日はトマス・ハリスの原作『レッド・ドラゴン』をマイケル・マンが映画化したサスペンス・ミステリー『刑事グラハム/凍りついた欲望』です。
刑事グラハム/凍りついた欲望(1986)アメリ
原題:Manhunter
監督:マイケル・マン
出演:ウィリアム・L・ピーターセン/キム・グライスト/ トム・ヌーナン/ ジョーン・アレンブライアン・コックスデニス・ファリナスティーヴン・ラング
一線を退き浜辺の家で家族と静かに過ごすウィル・グレアム(ウィリアム・L・ピーターセンのもとに、FBIの同僚ジャック・クロフォード(デニス・ファリナ)から捜査を手伝ってほしいとの依頼が舞い込む。2つの家族を惨殺した殺人事件の捜査が難航し、FBIはレクター博士を逮捕に追い込んだウィルの分析力を必要としていた。レクターの事件以来心身のバランスを欠いていたウィルはためらいながらも協力することに。。




予備知識なしに見て、ハンニバル・レクター?噛み付き魔?あれれ?と思ったら
これ、なんとハンニバル・レクターシリーズで『羊たちの沈黙』の前日譚として2002年に製作された『レッド・ドラゴン』と原作を一にするものだったんですね。
レッド・ドラゴン』でエドワード・ノートンが演じたFBI捜査官ウィル・グレアムを演じるのがウィリアム・L・ピーターセン。『レッド・ドラゴン』の記憶が曖昧なところをみるときちんと観てないのかもですがw、本作はとにかく面白くて引き込まれました。

グレアムは犯人の心理にシンクロし事件を推理するタイプの捜査官で、
その推理をもとにFBIはさまざまな技術を駆使し捜査していく。
その様子がとても丁寧でまず犯人像に迫るミステリーとして見ごたえがあります。
しかしこの映画の主題は実はグレアム自身の心の闇の描き方にあるんですね。
それをなんとなく言い表したのが副題の「凍りついた欲望」ということになるのかな。

グレアムは犯人が「噛み付き魔」なこともあり、犯人の心理に迫るため収監中のレクター博士に会いにいきます。レクターを演じるのはブライアン・コックス




レクターはグレアムの闇を見抜き、傷口に塩を塗りこむようにグレアムを翻弄する。
最初はグレアムの動揺の理由が判りにくかったんですが、後に彼が何を恐れているかがわかってくると、グレアムの陰鬱な表情のわけも凄く理解できる。
レクターを知的に絡ませ、グレアム、犯人それぞれの心理を暴いていくマイケル・マン自身による脚本のうまさに感心してしまいました。

犯人に関することは割愛しますが、
以下ネタバレで語らせて欲しいので、未見の方はスルーしてください。









先に述べたようにグレアムは犯人の心理に自分を重ね事件を推理するんですが
犯人の心理にシンクロしすぎるあまり心身のバランスを崩し治療を余儀なくされていたんですね。
レクターが見抜いていたのは、グレアムが人を殺すことの快感を共有してしまっていたこと。

ラストシーン、グレアムは犯人を射殺します。
数弾撃ち込んだ後、彼は犯人の頭に銃口を向けるも、発砲せずに銃を下ろす。

その後グレアムに救出されたジョーン・アレンに「あなたは誰?」と訊かれ
「グレアム・・」
「私はウィル・グレアムだ!」と応えるんですね。
「スタップ細胞は あります!」級にキッパリと(笑)

それまで陰鬱だったグレアムの表情が明るくなったこの瞬間
彼はレクターの呪縛から解き放たれたのではないかな。
自分はレクターではないんだと。

地味な映画ですが面白かったです。


ちなみに今回の滝汗ポイントは犯人(トム・ヌーナン)登場シーンですね(笑)



        ヌーっ!