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映画ノート

【映画】風とライオン

しばらく英国俳優記事を書けてないので、今日はTCM放送のオスカー特集からショーン・コネリー主演の『風とライオン』をチョイス。
1904年のモロッコを舞台に、米領事館夫人と2人の子供を誘拐したリフ族の首長と、人質救出に艦隊を派遣する米大統領ルーズベルトとの紛争を描く歴史アクション大作です。




風とライオン(1975)アメリ
原題:The Wind and the Lion
allcinemaデータ


ショーン・コネリーが演じるのはリフ族の族長ライズリ。
彼はモロッコへの列強進出に抵抗しようとする誇り高きアラブ人なんですね。
冒頭、領事館を襲い領事や使いの者たちを馬上から殺害するリフ族。
ジハードと言う言葉が何度も出てくるところや裏切り者の首を長い刀で叩き切るところなど、近年のイスラム民族の蛮行に通じるようで気持ち的に引くんですが、次第に自分の考え自体が変わってきます。


まず、ライズリを演じるコネリーの魅力ね。
彼は最初のみ手下の目の前で自分を罵倒する領事館夫人(キャンディス・バーゲン)に平手を食らわすものの、基本的に夫人と2人の子供を手厚く扱う。
ある未明、脱出を図った夫人が賊に襲われかけるところを、追ってきたライズリが救出するシーンなんかもう、強い男に守られたい女心がキュンキュンしちゃいます。



子供たちはいつしか勇敢なライズリに父性を覚え、夫人とライズリの間にも仄かな親愛の念が芽生えていく。もはや夫人には手を上げることもできず、手下の前で罵倒されても「困った人だ」というしかないライズリがかわゆい。
キャンディス・バーゲンの美しくも逞しい夫人像も相まって、禁断の恋と友情の一歩手前状態の2人の関係がいいんだなぁ。


そうするうちに、世間の声もあって、アメリカの大統領ルーズベルトが人質救出に動き始めると、映画は一気に戦争活劇へと様相を変えます。
これ実際にあった事件を元にしたお話なんですってね。



監督のジョン・ミリアスは黒澤信奉者とのこと。
黒澤映画はあまり観てないですが、馬を使ったアクションは侍映画を彷彿とさせるものであり
それも納得。
終盤のスペクタクルな戦闘シーンはリアルな迫力に興奮。ジェリー・ゴールドスミスの音楽も素晴らしい。

先に書いたように、アラブ人に対する私の印象が変わるのは、ライズリがルーズベルトに宛てた最後の手紙で決定的になります。

あなたは風の如く、私はライオンの如し。
あなたは嵐を巻き起こし、砂塵は私の眼を刺し、大地は乾き切っている。
私はライオンの如くおのれの場所に留まるしかないが、あなたは風の如くおのれの場所に留まることを知らない。

中東とアメリカの関係を絶妙に表現していると思いませんか?
昔ながらのやり方で、自分たちの土地を守ってきた彼らに、利を求めてちょっかいを出したのはアメリカはじめ列強各国。そして今に至るわけで・・
ライオンは静かに眠らせておかなくてはいけなかったのかも。

ま、そんな背景は置いておいたとしても、誇りをかけて闘う男の心意気を感じる作品。
男以上に男前だったキャンディス・バーゲンショーン・コネリーのある意味バディ映画でした。


男はやるっきゃないよな。全て無くしちまったけど・・。わはははは
ってのが妙に長閑だったね。