しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】フォックスキャッチャー




96年に起きたデュポン財団御曹司による事件を題材にした実録ドラマ。
富豪のデュポンにスティーヴ・カレル、事件に巻き込まれていくオリンピック金メダリスト兄弟にマーク・ラファロチャニング・テイタムが扮し、カレルさんとラファロがそれぞれ主演、助演男優賞にノミネート、ベネット・ミラーが監督賞にノミネートされるなど、思わぬ快挙を成し遂げましたね。

DVDになったので楽しみに観ましたが、いやもうほんと、ゾワゾワと不快感を引きずるいやぁな映画だったな(汗)


冒頭、殺風景なアパートで質素で味気ない食事をとるマーク(チャニング・テイタム)。
その後トレーニングに励む姿に覇気はない。次に小学生を前に金メダリストとしてのスピーチをし20砲諒鷭靴鯑世襦事務員が兄「デイヴ」の名前でチェックを切ろうとするところを「マーク」に修正させて・・。

この一連のシークエンスで、経済状況やマークを思う兄の心情、兄のおこぼれに与らなくてはならない弟の負い目やら情けなさなどマークを取り巻く状況や、これから立ち向かおうとする問題を一気に集約させる見せ方がまず見事。

マークが次のオリンピックで金メダルを取りたいと思うのは、兄弟の夢であると同時に、自立のために不可欠だったんでしょう。
ところがその切実な思いはデュポンによって阻まれることになります。


デュポンはその行動がそう見せるのかとても醜いんですよね。特殊メイクを施してるとはいえ、全身から不快なオーラを発するその姿はとても『40歳の童貞男』や『ラブ・アゲイン』のカレルさんとは思えないほど。

デュポンの心の闇はどこから来るのか。
親の愛を得られなかった?富豪の孤独?そんなの知るかと言いたい。
神聖なスポーツを小さな人間の心の隙間を埋めるために利用することにとにかく腹が立って仕方なかったですもん。
デュポンが金持ちじゃなかったらマークたちに関わることもなかったのにと思うと悔しい。
でも、マークの中の弱さや物事に悲観的な彼の本質がデュポンを惹き付けたのかなと思うとそれも悲しくてね。

不幸が迫り来る様をじっと我慢して待つという辛い鑑賞になったけど、それも演出の上手さゆえでしょう。優しさ溢れる兄デイヴを演じたマーク・ラファロはじめ、それぞれの心理を表現した俳優陣はお見事でした。

左は本物のご兄弟。