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映画ノート

【映画】ギリシャに消えた嘘

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ギリシャに消えた嘘(2014)イギリス・フランス・アメリ
原題:The Two Faces of January
日本公開:4/11/2015
映画.comデータ


あらすじ

1962年、ギリシャアテネでツアーガイドをしているアメリカ人青年ライダル(オスカー・アイザック)は、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)とその妻コレットキルスティン・ダンスト)と出会う。夫妻のガイドを務め食事を共にした夜、忘れ物を届けにチェスターのホテルを訪ねたライダルは、思わぬ事件に巻き込まれていく・・


感想
太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミスの原作『殺意の迷宮』を『ドライヴ』の脚本家ホセイン・アミニが映画化したミステリーです。
 
ツアーガイドが偶然知り合った旅行客のトラブルに遭遇し翻弄される・・
と書くと、ありがちな巻き込まれ型スリラーのようですが、これそんな単純じゃない。
というのもライダルはその場から手を引くチャンスが幾度もあったのにそうせず、
あえて夫妻に関わっていくんですよね。

そもそも、ライダルがチェスターを気に留めるのは、夫妻が金持ちオーラを放っていたのと、チェスターが死んだ父親に似てると感じたからですが、チェスターは洗練されたセレブのように見えて、実は裏の顔も持っている。
ライダルは直感的にチェスターの二面性を含め、彼に父の面影を見たのかもしれず
その出会いには偶然を超えた因縁のようなものを感じます。
チェスターはやがて妻とライダルの仲を疑い、三人の関係が緊張する中
アテネからクレタ島などに移動しながらの逃避行を余儀なくされる彼らの運命は・・・

 


脚本も務めるホセ・アミニは本作が初監督。
『ドライヴ』で見初めたオスカー・アイザックに出演を依頼し
ヴィゴが加わることで20年来の夢が実現することになったそうです。

ヴィゴ、オスカー・アイザックキルスティン・ダンストによるノワールなスリラーは
ヒッチコック作品のようだとも言われ、クラシックで正統派の赴き。
60年代ファッションに身を包んだキルスティンも悪くないんですが・・
最初コレット役には別の女優をキャスティングしていたらく、キルスティンを使うにあたり、キャラクター設定を少し変えたんだそう。個人的にはこれは裏目に出たかなぁと思います。
というのも、キルスティン演じるコレットはイノセントでライダルが彼女を愛してしてもおかしくない存在となっていて、それでは映画の焦点がぼやけると思うんですよね。
ライダルが夫妻に近づいたのは、あくまで父親の面影を持つチェスターに興味を持ったからで、言い方は悪いけれど、コレットはあくまでチェスターを翻弄する道具という扱いの方が、スッキリする気がします。ま でも終盤に向け、テーマははっきりしてくるのでいいかな。

パトリシア・スミスの原作は犯罪者のたどり着く先には容赦ないけれど、犯罪を犯すに至る理由や心の弱さをきちんと描いているところに優しさがあって好き。


原題のJanuaryとは、ローマ神話ヤヌスのこと。
二つの顔を持つこの神の姿に、相反する方向を向いても互いに惹かれあうチェスターとライデルを重ね合わせたのだそうです。
ヤヌスは出入り口と扉の神。色んな意味で映画を表現しています。


日本公開は4/11