しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】追憶と、踊りながら



追憶と、踊りながら(2014)イギリス
原題:Lilting
監督:ホン・カウ
日本公開:2015/5/23
作品情報

あらすじ
ロンドンの介護ホームで生活するカンボジア系中国人ジュン(チェン・ペイペイ)は一人息子のカイを失い途方に暮れていた。そんなジュンの元をカイと一緒に暮らしていたリチャード(ベン・ウィショー)が訪ねる。リチャードは英語の出来ないジュンのために通訳を雇い、ホーム仲間のアランとの仲も取り持とうとするが・・・

トレーラー

感想

ロンドンを舞台に、恋人を亡くした青年と恋人の母親の交流とコーピングを繊細に綴るヒューマンドラマ。
ウショー君演じるリチャードは実はゲイ。恋人カイが死に、どうしようもない悲しみの中にいる彼は、それでもカイの遺した母親ジュンを心配し、ジュンの暮らすホームへ足を運びます。
しかしカイはゲイであることを母に打ち明けないまま死んでしまったため、リチャードは真実を告げられません。もともと、カイとの時間を奪ったとしてリチャードをよく思っていないジュンはストレスさえ感じる始末。リチャードは何を求め、二人は愛するものの死を乗り越えることができるのか といった作品です。



とにかくベン・ウィショーがいい!
リチャードのカイに向ける深い深い愛に満ちた眼差しにドッキドキしたし、ウショー君ってこんな上手い人だったんだとあらためて思ったな。
途中何度か現実と追憶が交錯するシーンがあって、「あれ?」ってなるんですが
そこにいるはずのカイがいない。そんな演出に残されたものの悲しみが一層感じられて切ないんですよね。

ウィショー君の悲嘆の表情にはほんとやられた。
ホン・カウ監督自身もゲイということで、ウショー君をリチャードに選んだ目に狂いはありません。

また監督はイギリスに暮らすカンボジア系の中国人で、英語を話さないお母さんがいらっしゃるとのこと。本作は多分に監督自身の経験が反映されてるんでしょう。

母親を大切に思う一方で、自立もして欲しいと思う気持ちの表れか、映画の中でちょっとおせっかいに感じる部分もあったけれど、きれい事で終わらせないリアリティが、ラストシーンのカタルシスにも繋がっているわけで、これもありかな。
家族やカミングアウト、文化や移民といった題材を、クラシックな落ち着きと風格をもって描く、これが初監督作品というのだから監督ちょっと凄いと思う。柔らかな映像も美しく、好きな作品でした。