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映画ノート

【映画】フール・フォア・ラブ

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【作品情報】
フール・フォア・ラブ(1985)アメリ
原題:Fool for Love
監督:ロバート・アルトマン
原作/脚本:サム・シェパード
出演:サム・シェパードキム・ベイシンガーハリー・ディーン・スタントンランディ・クエイド/ マーサ・クロフォード

【ストーリー】
ニューメキシコ州モハベ砂漠に立つモーテルでひっそりと暮らす女メイ。そんな彼女のもとに、カウボーイ姿の男エディが現れる。愛憎をぶつけ合うエディとメイだったが・・

【感想】

老人の歩みでヨタヨタと進んでおりますシニア選手権(笑)
今日は『天国の日々』で気になって『ライトスタッフ』で惚れたサム・シェパードです。
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役者としても渋いところを見せてくれるシェパードさんですがもともと劇作家で
ベンダース作品などで脚本を手がけていることでも知られてますね。

本作も元はサム・シェパードが書いた舞台劇。
映画化に際し、シェパードは監督にロバート・アルトマンを指名し
アルトマンがシェパードを主演に起用したという一本です。


舞台となるのは、砂漠に建つ場末のモーテル

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そこにカントリーミュージックを鳴らしながらトラックがやってくると
キム・ベイシンガー演じるメイは必死に身を隠すのです。

一度は去ったトラックが再び舞い戻り、降り立った男エディを演じるのがシェパードさん
エディは窓からメイの部屋を覗き、やがてドアを破って力ずくで押し入る。

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頭を抱え、エディを拒絶したかと思うと、
次にはセーターを脱ぎ、指で唇を弄んで誘うようなしぐさをするメイ
しばし抱き合い唇を重ねる二人ですが、次の瞬間にはメイの膝蹴りがエディの股間を襲うというねw

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欲し合いながら拒絶しあう男女のやりとりを
古びたトレーラー・ハウスに暮らすハリー・ディーン・スタントンが眺めているという
不思議な光景が続くのですよ。

やがて、マーティン(ランディ・クエイド)という来客を迎えると話は一気に動き始め
エディとメイをこんな風にしてしまったのは、実はスタントンであると知ることになるんですね。


昨日、ゴミ屋敷といわれる家に住む人が市によって強制的にゴミを撤去されたというニュースを見て
外から集めて来てまで溜め込むのはどういうことなんだろうと不思議だったのだけど
もしかしたらこの映画のスタントンに通じるものがあるのかなと、ふと思う。

スタントンはスクラップに囲まれたクズのようなトレーラーハウスをねぐらとしていて
そのスクラップの中には、エディが事故ったバイクまであった
彼は自分に繋がるものを近くに置くことで、心を慰めていたのかなと
そんなことを思ったのですよ。

優柔不断という優しさから世捨て人になるしかなかったスタントンは
同じくシェパードが脚本を手がけた『パリ・テキサス』のトラヴィスに見えてくる。
世捨て人を演じさせたらスタントンの右に出るものはいないよねぇ。

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モーテルの住人の一組の母子は、かつてのメイと母親を投影しているのでしょう。
待ち人とともに車に乗ってモーテルを出た母子だけど
母子を車に乗せて立ち去る男とスタントンの目が合う瞬間
男は第二のスタントンであって、母子が舞い戻る確率は高いのではないかと思った。

終盤、求めても届かない愛と憎しみがぶつかり合うさまは、まさに舞台劇の迫力。
酒でごまかし口笛を吹き、飄々とすることで自分を保っていたスタントンだけど
繋がるものを無くした彼の、あれしかないというラストが切ない。

場末のモーテルの電飾、メイのドレス
乾いた映像の中の赤が印象的。
好きな映画です。