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映画ノート

【映画】『フレンチアルプスで起きたこと』人間完璧を求めてはいけない

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フレンチアルプスで起きたこと(2014)
スウェーデンデンマーク/フランス/ノルウェー
原題:Force Majeure
監督/脚本リューベン・オストルンド
出演:
ヨハネス・バー・クンケ / リーサ・ローヴェン・コングスリ / クリストファー・ヒヴュ/ クララ・ヴェッテルグレン / ヴィンセント・ヴェッテルグレン/  ファンニ・メテーリウス
 【あらすじ
フレンチアルプスの高級リゾートにスキー・バカンスにやって来たスウェーデンの一家4人。家族サービスに精を出すトマスだったが、テラスレストランで昼食をとっていた二日目、人工雪崩がテラスを襲う。大事には至らなかったが、トマスの咄嗟の行動が家族に波紋を投げかける・・


【感想
フランスのリゾート地で起きたスウェーデン人一家の絆を揺るがす事件を描くコメディドラマです。

まぁ、その事件というのは、雪山に面したテラスで食事中、思いのほか大きくなった人工雪崩に襲われ
父親のトマスがスマホだけ持って逃げちゃったということなんですね。
テラスは真っ白な雪煙に包まれたものの、幸い雪崩は目前で止まり、トマスも何事もなかったように席に戻るんですが、
トマスが家族を置き去りにした事実に妻は戸惑います。
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「あなた、私たちを置いてなんやねん!」とかなじればまだいいのかもだけど
知性あるセレブ妻はそんなことしないのね。
そして自分の中で不信感を募らせ、ジワジワジワジワ夫を責めることになるんだわ。

困るのは夫がその事実を受け入れようとしないこと。
「へ?自分逃げてないし」の一点張り。
事実まで否定されちゃ妻も引き下がれないよねぇ。

まぁしかし夫が逃げたことを認めようが認めまいが、一度揺らいだ信頼を修復するのは難しい。
夫婦を取り持つ友人が墓穴を掘ったり、ところどころ笑いどころもあるけれど
コメディと片付けるにはあまりにもシリアスな現実を描いてもいて
心理ドラマとして十分スリリング。
周囲の音や使われてる曲がやたらと心をざわつかせ
何か良からぬことが起きるぞと不安を掻き立てる演出も効いてました。

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しかしこの家族どうしてこんなにこじれちゃったんだろう。
思うに彼ら、完璧であることを求めすぎなんですよね。
裕福な家庭、綺麗なママと仕事も出来て素敵なパパ
たった5日の旅行に家族分の電動歯ブラシ持たなくてもいいじゃないかと思ってしまう。
完璧を求めるゆえにダメな夫を許せないし、完璧な自分を取り繕うために逃げた事実を認めず
夫婦の溝は深まるばかり。


ラストシーンは解釈が分かれるかもなぁ。

ことの修復を演出して調子こいてしまった妻が引き起こす新たなディザスターで
これから起きることこそが「フレンチアルプスで起きたこと」かもしれない。

でもちょっとだけ爽快感を感じるのは、トマスに変化が見えること。
隣の人にタバコを貰って吸うトマスに子供が訊く
「パパ タバコ吸うの?」
「あぁ、吸うよ」とトマス。
そこには完璧な自分を子供にも見せようとするかつてのトマスはいない。
完璧を求めることも、完璧でいようとすることも間違いというのがこの映画のテーマなら
これはとりあえずハッピーエンドじゃないでしょうか(笑)



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