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映画ノート

【映画】ザ・ウィッチ(原題)

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ザ・ウィッチ(2015 アメリカ/イギリス/カナダ/ブラジル
原題:The Witch 
監督/脚本:ロバート・エッガース
出演:アーニャ・テイラー‐ジョイ/ラルフ・アイネソン

【あらすじ】
17世紀のニューイングランド。イギリスからの移民であるウィリアムとキャサリン夫婦は敬虔なクリスチャンであろうと努めていたが、住民との意見の食い違いから村を離れ、4人の子供と森の奥で暮らし始める。やがて5人目の赤ん坊が生まれるが、長女のトマシンがいないいないばぁであやしている最中に忽然と姿を消す。悲しみに暮れる母キャサリンはトマシンに不信感を抱き始め・・


【感想】
英国男優総選挙特集もあと二本で終了する予定なんですが、まもなくハロウィンということで
恒例のハロウィン・ホラー特集に突入しました(笑)

今日紹介するのは『ザ・ウィッチ(原題)』。サンダンス映画祭で監督賞を受賞したホラーです。
サンダンスで絶賛された というと想像がつくかもしれませんが、万人に受けるタイプの作品ではありません。
IMDbを見てみても、マスターピース歓喜する者がいる一方で、★一つ(★10個で満点)がズラリと並ぶなど、評価が完全に二分しています。


勝手な想像をすれば、敬虔なクリスチャン一家に不幸が及ぶことに嫌悪感を覚える人が多いのかなと思います。
クリスチャンにしたら、懺悔をしても救ってもらえないなんて許せないことでしょ。
宗教関係なしの私は凄く怖くて面白かったんですけどね。
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まずこの映画、想像していたのとまるで違いました。
最近の魔女ものときたら、アクションまがいのウッチハンターものが主流でしょ。
ところが、本作はアクションなど皆無で、赤ん坊のサミュエルが消えたことをきっかけに、家族が互いに猜疑心を募らせるというサイコロジカル・ホラーの様相を呈すんですわ。

一応魔女も姿を見せるので完全な心理ホラーではないんですが、家族の誰が魔女にとり憑かれてるのかとドキドキ。ほとんど自然光で撮ってると思われる暗い映像や、風のざわめき、近くに魔女がいることを思わせる声や音といった音響効果も効いて、アーティステックで陰鬱な怖さを演出しています。

監督は本作が初という新鋭。
言葉が古い言い回しになっていて私にはわかりにくかったんですが、エンドロールの説明によると、台詞はセイラムの魔女裁判での記録をもとにしているとのこと。家族の暮らす家の素材や道具にも当時のものを使っており、すべてにこだわりをもって作られてるんですね。
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出演者の中では、子供たちが印象的です。
長女のトマシン、長男のケイレヴ、双子の兄妹それぞれの演技の巧いも印象的です。トマシン役のアーニャが漂わせる幼い色香にロリ心をくすぐられる人も多いかも。

家族内で起きる魔女狩りをエンタメ性を排除したリアリティで描き、それがトラウマ級に怖い。
「魔女」ということばに置き換えられる「邪悪な心」はどうやって生まれるのかを考えさせられる一本でした。

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