しまんちゅシネマ

映画ノート

黒い牡牛

thebraveoneposter.jpg

 黒い牡牛(1956)


≪あらすじ≫
テ嵐の日、倒木の下敷きとなって死んだ牛から生まれ出た子牛をレオナルド少年が連れ帰る。少年は子牛をヒターノと名付け大切に育てた。


赤狩りでハリウッドを追われたダルトン・トランボがロバート・リッチの偽名で原案を書き、アカデミー賞の原案賞をとったことで有名な作品。

メキシコの貧しい農家の少年レオナルド(マイケル・レイ)は、死んだ母牛から生まれた子牛を連れ帰り可愛がる。
どうやったらこんなやんちゃなしぐさが撮れるのかと思うほど、ヒターノが可愛らしい。
村の子供たちがペットを連れて教会に出向くシーンのカラフルな色合いとほのぼの感がたまらない。

しかし成長したヒターノは闘牛として売られることに。
それは牛の死を意味すること。
どうしてもヒターノを守りたい少年は、ヒターノを取り戻そうとメキシコ・シティーへ。
ushi.jpg

牧歌的な穏やかさから一転、少年の冒険の旅が始まる展開に驚かされる
大統領に嘆願してまでヒターノを助けようとしたレオナルドだったが、ヒターノはすんでのところで闘牛場に引き出される。
涙を流しながらも、ヒターノを見守り決してあきらめないレオナルド
満員の観客を上空から映し出すショットも臨場感たっぷりで、そこから迫力の闘牛シーンへとなだれ込み
テイストの異なる三本の映画を一気見した気分になる。


トランボが赤狩りでハリウッドを追われたときに書き上げた物語であることを考えると
牛の名前をジプシーを意味するヒターノとしたことにも意味を感じるし、牛に施された焼き印にはレッドパージで汚名を着せられたことを重ねてしまう。あきらめない少年、牛への愛には、赤狩りに屈するうことなく映画を書き続けるトランボ自身を投影せざるを得ないだろう。タイトルの「勇敢なもの」はトランボ自身、あるいはハリウッド・テンを表現したものか。

しかし、映画は赤狩り抜きにしても素晴らしい。
胃が痛くなるような緊張から感動のラストシーンへ。
隅から隅まで見ごたえのある映画だった。

映画データ
原題:The Brave One
製作国:アメリ
監督:アーヴィング・ラパー
原作:ロバート・リッチ(ダルトン・トランボ
出演:マイケル・レイLeonardo
   Rodolfo HoyosRafael_Rosillo
   エルザ・カルデナスMaria
   カルロス・ナバロDon_Alejandro
   ジョイ・ランシングMarion_Randall