しまんちゅシネマ

映画ノート

ゲティ家の身代金(2017)


all the money in the world
大富豪ジャン・ポール・ゲティ氏の17歳の孫ポールが誘拐された事件を描く、実話ベースのサスペンスドラマです。
公開の一か月前にゲティ役のケヴィン・スぺイシーがセクハラ問題で降板し、88歳のクリストファー・プラマーが代役を務めたことで話題になりました。急な要請にこたえたプラマーさんはもちろん、休暇期間に呼び戻された役者も大変だったでしょうけど、スぺイシーパートを9日間で撮り直し、予定通り公開させたリドリー・スコットのど根性が凄い。
大富豪のゲティ氏の孫ポールが、ローマで誘拐されるシーンから始まる本作。
1700万ドルの身代金が要求されるも、ゲティ氏の息子と離婚し、アメリカで平凡に暮らすポールの母親ゲイルにはそんなお金はない。
やむなくゲティ氏に助けを求めるも、プラマー演じるゲティ氏は支払いを拒否するという驚きの展開に(汗)
原題のall the money in the worldに表現されるように、ゲティ氏は“世界中のすべての金を手にした”大富豪。
でも彼はホテルのランドリー代でさえケチって、お風呂場で下着を洗うようなどケチなんです!
前半はそんな嘘のようなどのどケチぶりをジョークのように楽しめるのだけど、身代金が支払われないことで、誘拐犯たちがしびれを切らし始める中盤からはサスペンスに拍車がかかる。いくつかは映画を盛り上げるためのフィクションらしいですが、果たして孫は救出されるのかに、手に汗握りました。
いい役者を使うのが映画を成功させる秘訣だと言ってはばからないリド爺だけに、出演者もいい。
ミシェル・ウィリアムズは、窮地に追いやられながら、息子を救うため奔走する母親をリアルに演じていて、本当に巧い。
ゲティ家に雇われ、交渉にあたる元CIAのマーク・ウォルバーグ、誘拐犯の一人ロマン・デュリスと主役級の役者が脇を固める中、誘拐される孫役のチャーリ―・プラマー君の魅力も光ってます。
ただ、残念なのは主要キャストそれぞれいいからなのか、主役のミシェルが目立たない点。
ミシェルの心情を軸に物語が進むと、もっとのめり込めたのかなという感じもありました。
ま、多分お金のインパクトが強すぎなんですね。思いのほか映画の評価が良くないのも、多分ゲティ氏の守銭奴ぶりに胸糞が悪くなるからでしょうw お金もありすぎたら人間クズになるね。
プラマーは9日間の撮影でゲティを演じ、アカデミー賞助演男優賞ノミネート。
問題なくうまいんですが、人の心をなくした守銭奴なプラマーさんは見てて辛かった。
スぺイシーの方が人に疎まれて当然の冷徹な億万長者がハマったかもだ。
ちなみにこちら特殊メイクでゲティを演じるスぺイシーと、本物のゲティさんです。