『31 days of oscar』祭りを開催します
先日アカデミー賞ノミネーションが発表されました。
大方前評判通りという印象ですが、どの作品がオスカーに輝くでしょうね。
TCMというアメリカのクラシック映画専門チャンネルでは、『31 days of oscar』と称し、毎年オスカー月に過去のアカデミー賞受賞作品を特集放送していました。
映画ファンとしては、これに乗じ、一年で最も楽しみなこの時期を盛り上げたい!
ということで、『31 days of oscar』祭りを開催します。
本年度のノミネート作品やら過去の受賞作品のレビューをはじめ、オスカー関連の記事を挙げる、「わたしスタイル」の「時々投稿」となりますが、一緒に楽しんでいただければ嬉しいです。
Day1の今日は祭りの予告。それと・・
TCMの『31 days of oscar 2021』のラインナップを下記リンクで紹介しておきます。
原題のままですが、ごめんなさい。
何本くらいに観てますか?
【映画】ブラック・クランズマン
スパイク・リー監督による社会派コメディです。
ブラック・クランズマン (2018)
BlacKkKlansman
【ストーリー】
1972年、ロン・ストールワースはコロラド州コロラド・スプリングズの警察署で黒人として初めて警察官に採用される。
情報部に配属されたロンは白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の新聞広告に電話をかけ、白人のレイシストを装ってKKK支部に入会するが・・
いや、おしろいを塗りたくっても流石に無理だろってことで
実際にはアダム・ドライヴァー演じる同僚の白人刑事が、本名で支部に電話をかけてしまったロンに代わってKKKに潜入する。
ロンは電話でのやりとりを担当し、つまり、白人、黒人の刑事2人でロン・ストールワースという人物を演じるというなんとも奇想天外なお話だけど、これが実話だというから驚きます。
主演の黒人刑事ロンを演じるジョン・デヴィッド・ワシントンは、デンゼル・ワシントンの息子らしい 。
『TENET テネット』は未見なので、初めて見る役者さんでしたが、父デンゼルほどハンサムではないけれど、どこか飄々としていて独特のユーモアを湛えているのがいいね。
コロラド・スプリングズ署初の黒人刑事として採用され、署内でも差別に遭う役どころだけど、ロン本人は社会の役に立ちたいと思っているまじめな青年で、それまで差別を感じることなく暮らしていたらしいあたり、実生活はセレブに違いないジョン本人に通じるところがある。絶妙なキャスティングといえます。
ちゃんとした教育を受けており、黒人だけど白人訛りを使いこなすのが自慢で、電話で会話しても黒人とバレない。
黒人の発音をアダム・ドライヴァーに教えたりするシーンは爆笑もので、このあたりの笑いのセンスは、製作のジョーダン・ピールの功績でしょう。
それでも、潜入捜査につきものの緊張感はちゃんとあって、緩急のバランスよく映画として面白いです。
舞台は70年代だけど、映画は明らかに分断を強めたトランプ政権を揶揄してますね。
人種差別は70年代の頃からちっとも変わっていない。いやますます酷いじゃないかというメッセージかな。
最後の実録映像には虚無感にも苛まれるものの、どうしても黒人の一方的な目線を感じてしまtって。そこがちと残念。
日本人は、マイノリティ意識を持たずに済んでいるのは、幸せなことですよね。
映画データ
製作年:2018年
製作国:アメリカ
監督:スパイク・リー
脚本:スパイク・リー/デヴィッド・ラビノウィッツ/ケヴィン・ウィルモット/チャーリー・ワクテル
原作:ロン・ストールワース
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/アダム・ドライヴァー/ローラ・ハリアー/トファー・グレイス
【映画】ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
ゴールデン・グローブ賞が発表されましたね。
おおかたの予想と少し違う結果だったようにも思いますが、アカデミー賞はどうでしょうね。
私はというと、前年度のオスカー関連作品をやっと観ているところでして
今日は作品賞、脚色賞、主演女優賞など7部門にノミネート(衣装デザイン賞を受賞)された『ストーリー・オブ・マイライフ』の感想を。
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 (2019)
Little Women
【ストーリー】
1869年、マーチ家の次女ジョーはボストンの実家を離れ、一人ニューヨークに暮らしている。家庭教師をしながら、小説家になるべく執筆活動に励むジョーは、家族で過ごした故郷ボストンでの日々を回想する。
アメリカの女性作家ルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説『若草物語』を、グレタ・ガーウィグが監督/脚本し、映画化した一本です。
今回ジョーを演じるのは、初監督作品の前作『レディ・バード』でも主演したシアーシャ・ローナン。『レディ・バード』はグレタ嬢の半自伝的作品と言われていて、シアーシャの動きがグレタを思わせるところがあったのだけど、本作のジョーもどこかグレタっぽさを感じるところがあるんですよね。
おそらくですけど、グレタは 物書きとして自立しようと頑張るジョーに自身を重ねたんじゃないかな。
女性が自身の力で経済的に自立するのが困難だった時代に、小説家として成功したジョーは男性社会である、アメリカの映画監督業界で奮闘するグレタ、そのもの。
だからニューヨークの街を颯爽と駆け抜けるジョーにもグレタを感じるし
ラストシーンで『若草物語』を装丁する過程を丁寧に見せ、満足げにほほ笑むシアーシャには、グレタの映画人としての達成感みたいなのを感じ、清々しいものがありました。
せわしなく時間軸が交錯するのは、序盤、わかり難いと感じたけれど
姉妹それぞれの成長や変化を意識しやすかったので、それもありかな。
最近は水彩画に興味を持っていて
映画のワンシーンを素敵に描けるようになりたいと思ってるんですが
本作には描きたいと思う美しいシーンがいっぱい出てきて、心が躍りまくりました。
女性好みかもしれないけれど、個人的には、『パラサイト~』や『1917 命をかけた伝令』よりも本作が好き。
満足な一本でした。
映画データ
製作年:2019年
製作国:アメリカ
監督/脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン/エマ・ワトソン/フローレンス・ピュー/エリザ・スカンレン/ローラ・ダーン/ティモシー・シャラメ/メリル・ストリープ/トレイシー・レッツ/ルイ・ガレル/クリス・クーパー
クリストファー・プラマー追悼『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019)
Knives Out
【あらすじと感想】
世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが開かれた。その翌朝、ハーランが首から血を流した遺体となって発見される。
血しぶきの飛び方に遮るものが何もないことから、自殺と思われたが・・
世界的に有名なミステリー作家ハーラン・ブランの死をめぐるミステリーです。
先日お亡くなりになったクリストファー・プラマーさまが出演されてて観ましたが、これが期待以上に面白かった。
立派な洋館の書斎で主のミステリー作家が首を掻っ切った遺体となって発見される。
警察の初動捜査で自殺と処理されたが、ブノア・ブランという私立探偵の元に再捜査を依頼する手紙が届いたことから、事件から一週間後、自殺か他殺かをめぐり、再び聞き取り調査が行われる・・というお話です。
当日、事件現場となった館を訪ねたのは、誕生日パーティに出席したハーラン家の一族。ジェイミー・リー・カーティス、マイケル・シャノン、トニ・コレット、クリス・エヴァンスなど癖のある役者が勢ぞろい。
血族関係のないのは、第一発見者であるお手伝いさんと、ハーランの専属ナースのマルタ。他殺だとしたら、この中の誰が犯人かという流れ。
実はハーランはお金を持ちすぎた故に家族の独立を妨げたと後悔していて、家族ともちょっとしたトラブルがあったのが分かってくる。
一族の誰がハーランを殺してもおかしくないといった設定で、アガサ・クリスティの王道ミステリーをほうふつさせるんですね。
実際、監督のライアン・ジョンソンは、アガサ・クリスティに捧げる密室殺人ミステリーとしてオリジナル脚本を執筆したらしい。
ちょっとだけネタバレになるんですが・・・
これ、実は物語の序盤でハーランが死に至った経緯が描かれ
いわゆる「犯人」が誰かを見せてくるんですよね。
でもそれが序盤すぎるところに観る方は「?」を感じてしまうし
わざわざ名探偵を投入する意味は何だろうと不思議に思うわけです。
私立探偵ブノア・ブランを演じるのはダニエル・クレイグ。
そもそも彼は依頼主が誰なのかを知らないということで
いったい誰が「再捜査を望んでいるのか」というところも謎。
英国人のダニエルさんが南部訛りで喋るところがなんか可笑しいんですが、さらに可笑しいのは、ナースのマルタをワトソン君並みの助手みたいに捜査に利用するところ。
というのもマルタはハーランのよく話し相手で、家族のタラブルに関してもよく知っている。おまけに彼女は嘘をつくと吐いてしまうという体質であることから、うそ発見器みたいに「使えちゃう」わけです。
王道でありながら、そんなちょっと型破りな要素を加えるところがコメディよりで現代的。
ブノア・ブレンもちょっとオフビートだけど、鮮やかな推理手腕を発揮してくれるのも見もの。コミカルでテンポよく、2019年のアカデミー賞で脚本賞にノミネートの脚本はひねりもあって最後まで楽しかったです。
ちなみにゴールデン・グローブ賞ではコメディ部門の作品賞のほか、男優賞と女優賞にダニエル・クレイグとマルタ役のアナ・デ・アルマスが仲良くノミネートされてます。
この二人『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも共演してますね。
いきなり死体で登場するプラマーさまですが、時間を巻き戻した形でお元気な姿を見せてくれるのが嬉しい。
富豪らしい気品とミステリー作家らしい遊び心を持ち、家族の将来を思う優しいおじいちゃんという役どころを、プラマーさまは魅力的に演じてました。
再見含め、出演作を今後もボチボチ観て追悼したいと思います。
映画データ
製作年:2019年
製作国:アメリカ
監督/脚本:ライアン・ジョンソンアンソニー・ミンゲラ
出演:ダニエル・クレイグ/クリストファー・プラマー/アナ・デ・アルマス/ジェイミー・リー・カーティス/ドン・ジョンソン/マイケル・シャノン/トニ・コレット/クリス・エヴァンス
【映画】白夜行 -白い闇の中を歩く-
白夜行 -白い闇の中を歩く- (2009)
White Night
【ストーリー】
密室となった廃船で質屋の店主が殺害される。決定的な証拠はなかったが、容疑者の死亡により事件は一応解決する。
しかし、担当刑事のハン・ドンス(ハン・ソッキュ)は腑に落ちなかった。
容疑者の娘で、子供とは思えない妖艶な魅力を放つ少女イ・ジアと、被害者の息子で、どこか暗い目をした物静かな少年キム・ヨハンの姿が気になっていた。
それから14年後、美しく成長したジア(ソン・イェジン)と、闇を抱え、謎に包まれたヨハン(コ・ス)の周辺で不可解な事件が立て続けに起こり、2人の意外な関係が浮かび上がってくる。——。【公式サイトより】
東野圭吾の『白夜行』の韓国版。
被害者の息子と容疑者の娘となった二人の周りで起きる出来事を、14年の歳月を交錯させ描くサスペンスミステリーです。
2006年製作の綾瀬はるか主演のドラマと2011年製作の堀北真希の映画はどちらも未見ですが、韓国版は最初に事件が起きた子供時代と、14年後、大人になったジア(原作では雪穂役)とヨハン(原作では亮司役)の周りで様々な事件が起きる、その2つの時代を時間軸を交錯させ描いてまして、途中は大胆にカットした形ですね。
今回、原作を後から読んだので、ジアとヨハンの関係も、14年前に(原作では19年前)何が起きたのかもわからないままの前半は、概要を把握しづらかったというのが正直なところ。
それでも、ジアとヨハンの繋がりが次第にわかってくるに従い、面白さが増す作りなので良しでしょう。登場人物が少なくなってはいるものの、主な事件は(役割を変えて)網羅されていて原作の雰囲気を壊してないのは凄い。
原作にない事件が付け加えられていたり、原作では描写されていない犯行現場を視覚化しているシーンもあり、刑事の推理だけで終わっていた殺人事件の全容を見れるのも面白いんですよね。
ジアとヨハンの交流シーンなどは新たな解釈ともいえるもので、それによって2人の繋がりを一層に感じることができるのは本作の魅力でもあります。
大人になったヒロイン ジア(雪穂役)を演じるのは『愛の不時着』で人気のソン・イェジン、ヨハン(亮司役)にコ・ス。
『白夜行』というのは、そのまま読むと白い夜を行く。「実際には暗い夜のはずなのに、光を感じられる中を行く」といった意味のようで、太陽の下を歩けない罪を背負った二人が、それでも互いの存在を光(心の支え)として生きていく姿を表しているのでしょう。
「いつの日か一緒にお日様の下を歩きたい。」
そんな夢を持ち続けた2人。
ラストシーンのジアの行動に驚いたのだけど、ジアを守るヨハンの気持ちを受け止めた上でのあのセリフだったのだろうと今は思う。
切ない。。
刑事役にハン・ソッキュ。彼は質屋の主人殺人事件の時から関り、現在ジアの周囲で起きている事件を捜査するとともに、ジアとヨハンの繋がり、さらには14年前にあやふやになっていた事件の真相を追い求める執念の刑事です。
途中を削っているので、地道な捜査で積み上げた刑事の推理を生かせないのは残念に思うところですが、息子を事件に巻き込んでしまったというエピソードを付け加えることで老刑事の悔いと執念を補てんし、さらに息子と同じ年頃のヨハンへの父性のようなものまで感じさせたところに人間ドラマとしての深みも出ました。
ダークで儚いミステリー。
原作ファンにもお勧めしたい一本です。
映画データ
製作年:2009年
製作国:韓国
監督:パク・シヌ
脚本:パク・ヨンソン、パク・シヌ
出演:ソン・イェジン/ハン・ソッキュ/コ・ス/イ・ミンジョン/チャ・ファヨン