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映画ノート

【映画】白夜行 -白い闇の中を歩く-

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白夜行 -白い闇の中を歩く- (2009)
White Night


【ストーリー】
密室となった廃船で質屋の店主が殺害される。決定的な証拠はなかったが、容疑者の死亡により事件は一応解決する。
しかし、担当刑事のハン・ドンス(ハン・ソッキュ)は腑に落ちなかった。
容疑者の娘で、子供とは思えない妖艶な魅力を放つ少女イ・ジアと、被害者の息子で、どこか暗い目をした物静かな少年キム・ヨハンの姿が気になっていた。
それから14年後、美しく成長したジア(ソン・イェジン)と、闇を抱え、謎に包まれたヨハン(コ・ス)の周辺で不可解な事件が立て続けに起こり、2人の意外な関係が浮かび上がってくる。——。【公式サイトより】


東野圭吾の『白夜行』の韓国版。
被害者の息子と容疑者の娘となった二人の周りで起きる出来事を、14年の歳月を交錯させ描くサスペンスミステリーです。

2006年製作の綾瀬はるか主演のドラマと2011年製作の堀北真希の映画はどちらも未見ですが、韓国版は最初に事件が起きた子供時代と、14年後、大人になったジア(原作では雪穂役)とヨハン(原作では亮司役)の周りで様々な事件が起きる、その2つの時代を時間軸を交錯させ描いてまして、途中は大胆にカットした形ですね。

今回、原作を後から読んだので、ジアとヨハンの関係も、14年前に(原作では19年前)何が起きたのかもわからないままの前半は、概要を把握しづらかったというのが正直なところ。

それでも、ジアとヨハンの繋がりが次第にわかってくるに従い、面白さが増す作りなので良しでしょう。登場人物が少なくなってはいるものの、主な事件は(役割を変えて)網羅されていて原作の雰囲気を壊してないのは凄い。

原作にない事件が付け加えられていたり、原作では描写されていない犯行現場を視覚化しているシーンもあり、刑事の推理だけで終わっていた殺人事件の全容を見れるのも面白いんですよね。

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ジアとヨハンの交流シーンなどは新たな解釈ともいえるもので、それによって2人の繋がりを一層に感じることができるのは本作の魅力でもあります。

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大人になったヒロイン ジア(雪穂役)を演じるのは『愛の不時着』で人気のソン・イェジン、ヨハン(亮司役)にコ・ス。
白夜行』というのは、そのまま読むと白い夜を行く。「実際には暗い夜のはずなのに、光を感じられる中を行く」といった意味のようで、太陽の下を歩けない罪を背負った二人が、それでも互いの存在を光(心の支え)として生きていく姿を表しているのでしょう。

「いつの日か一緒にお日様の下を歩きたい。」

そんな夢を持ち続けた2人。

ラストシーンのジアの行動に驚いたのだけど、ジアを守るヨハンの気持ちを受け止めた上でのあのセリフだったのだろうと今は思う。

切ない。。


刑事役にハン・ソッキュ。彼は質屋の主人殺人事件の時から関り、現在ジアの周囲で起きている事件を捜査するとともに、ジアとヨハンの繋がり、さらには14年前にあやふやになっていた事件の真相を追い求める執念の刑事です。

途中を削っているので、地道な捜査で積み上げた刑事の推理を生かせないのは残念に思うところですが、息子を事件に巻き込んでしまったというエピソードを付け加えることで老刑事の悔いと執念を補てんし、さらに息子と同じ年頃のヨハンへの父性のようなものまで感じさせたところに人間ドラマとしての深みも出ました。

ダークで儚いミステリー。
原作ファンにもお勧めしたい一本です。

 

映画データ
製作年:2009年
製作国:韓国
監督:パク・シヌ
脚本:パク・ヨンソン、パク・シヌ
出演:ソン・イェジンハン・ソッキュ/コ・ス/イ・ミンジョン/チャ・ファヨン