しまんちゅシネマ

映画ノート

バベル


2006年(米) 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ    脚本:ギジェルモ・アリアガ  出演:ブラッド・ピットケイト・ブランシェットガエル・ガルシア・ベルナル 役所広司菊地凛子/アドリアナ・バラーザ/エル・ファニング 【ストーリー】モロッコを旅行中のアメリカ人夫婦のリチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)が、突然何者かによって銃撃を受け、妻が負傷するという事件が起こる。同じころ、東京に住む聴覚に障害を持った女子高生のチエコ(菊地凛子)は、満たされない日々にいら立ちを感じながら、孤独な日々を過ごしていた……。
■感想
「プチオスカー祭り」第3弾!
今日は作品賞他6部門7ノミネートのこの作品。

タイトルの「バベル」は【バベルの塔】の意味だそうです。
この【バベルの塔】の話は旧約聖書に登場します。
その昔、人々が当時最大の技術を駆使しバベルの塔を建てますが
天にとどけと建てられた塔は神の怒りにふれ「言葉を分け、通じなくされた」とされています。

この作品のテーマはまさにこの【バベル】なんですね。

ブラッド・ピット演じるリチャードと妻スーザンを演じるケイト・ブランシェットの夫婦。
ロッコを旅行中、突然何者かによって銃弾を受け重傷を負います。

ブラピ夫妻は二人の子供をメキシコ人のベビーシッターに預けていました。
彼女は息子の結婚式に参加するためメキシコに行こうとするのですが・・・。
その甥を演じるのがガエル君。

スーザンを撃ったライフルに関係してくるのが日本の役所広司です
そして注目の菊地凛子はその娘チエコ。聴覚に障害をもつ孤独な高校生。

ロッコ、メキシコとアメリカの国境、日本の3つの場所を基点にそれぞれの物語が展開します。
関連のあるもの同士、ほぼオムニバス形式で、というのはアモーレス・ペロスと同じ。
監督さんはこの形がよほどお気に入りなんですね。

この3つの物語の主軸となるのが「言葉の壁」ということでしょうが、
これは単に言語というものではなく、気持ちが通じない。心が通わないというものであると感じます。
夫婦でありながら大きな心の壁をもっているブラピ夫妻。
親子でありながら分かり合えない凛子さんと役所広司
メキシコ人と国境警備員等々。

東京でのエピソードでは凛子さんの熱演が高く評価されてます。
ロッコやメキシコの映像に比べ明らかにテンションの違うこの東京のストーリー。
正直始まってしばらくはこのストーリーに違和感を感じました。
日本への見方が大きく変わりそう。。。なんて思ってしまい、なんとも居心地の悪さを感じます。
でも時折挿入されるチエコの音の無い世界。これこそがテーマに通じる物だと気づきました。

何も聞こえない。聞こうとしない。
人は心を通わせるすべを失ったのか。。。。
ツアー客にみるような先進国の人々の傲慢さや、偏見にあふれた世界の描写は空しい物を感じますが
その虚無感からの再生に心が洗われました。

この作品のブラピはいいです。風貌的にかつての美しさを感じない分、久々に「ブラピ」ブランドを
脱ぎ捨てた、ハングリーなブラッド・ピットを観ることが出来ます。惚れそう。。
夫婦の物語に一番感動しました。


凛子さんの陰に隠れてしまってますがメキシコ人ベビーシッターを演じたアドリアナ・バラーザ
助演女優賞にノミネートされてるんですね。彼女も確かに良かった。

作品賞にノミネートされた対抗馬「硫黄島からの手紙」も「ディパーテッド」も未見ですが
この「バベル」が作品賞をとっても不思議ではないと思いました。


お薦めです。


★★★★*