しまんちゅシネマ

映画ノート

楢山節考


1983年(日本)監督・脚本:今村昌平出演: 緒形拳坂本スミ子/あき竹城/倉崎青児左とん平辰巳柳太郎深水三章清川虹子     江藤漢/常田富士男小林稔侍/三木のり平ケーシー高峰倍賞美津子殿山泰司 【ストーリー】信州の山深い寒村。いまだ元気に働くおりんだったが、今年、楢山まいりを迎えようとしていた。それは、70歳の冬に皆、息子に背負われ楢山へ捨て置かれるという村の掟のこと。神に召されると喜ぶおりんに対し、息子・辰平は気持ちの整理がつかない……。
■感想
緒方挙さんがお亡くなりになったときに、彼の出演作を観ようとレンタルリストにあげていて、先日届いたので観ました。

この映画が姥捨て山のことを描いた作品だということは知っていたのですが、今回初めての鑑賞。
信州のとある山深い村・・ここでは70歳になると、「楢山参り」が待っています。
それは口減らしのため、楢山に捨て置かれるという村の掟。

姥捨てという古い風習があったことは聞き知ってはいたものの、この話のどこまでが本当なのかはわかりません。
しかしこの映画で描かれる村の掟の数々には言葉をなくしました。

長男が母を背負って山に捨てに行く。
非情で残忍なことではあるけれども、掟に従うことは子孫繁栄のため、それは神を崇めることだと信じるしかないのです。

まもなく「楢山参り」を受け入れる69歳の母おりん(坂本スミ子)。
母を捨てることに葛藤する長男辰平(緒方挙)。
前半、ややもすれば左とん平のびっくり演技におされ気味に思えた挙さんの演技でしたが、
母を背負い山を歩く無言の演技では、悲しみと罪悪感、そして諦めの気持ちをよく演じていました。
途中水を汲みに行った際に母の姿を見失い、母は逃げ去ったと感じた瞬間の安堵の表情、しかしすぐにもとの場所に逃げも隠れもせずにいる母を見つけたときの落胆の表情などうまいですよね。

新しい生を受け入れるためには、「死」もまた受け入れなければならない時代。
映画の中で自然界の小動物たちの性の営みの映像が多く挿入され「生」が強調されてるのも印象的で、ちょっと『狩人の夜』を思い出しました。

カンヌでパルムドールを獲得したこの映画、世界中に衝撃を与えたことでしょう。
余談ですが、アメリカでリリースされてるDVDには言葉の説明(例:やっこ、ほっぺたが落ちる)や度量のリファレンスなどがあり、そのまま日本語バージョンを聞くよりもわかりやすく勉強になりましたw


★★★★☆