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映画ノート

アルバート氏の人生





アルバート氏の人生(2011)アイルランド
原題:Albert Nobbs
監督:ロドリゴ・ガルシア
出演:グレン・クローズミア・ワシコウスカアーロン・ジョンソンジャネット・マクティアブレンダン・グリーソン


独身の女性が自立して生きることがまだ許されていなかった19世紀アイルランドのダブリン。人付き合いを避けて静かに暮らす内気な執事アルバートは、貧しく孤独な生活から逃れるため、性別を偽り男性として生きる道を選んだ女性だった。しかし、ある日、ハンサムなペンキ屋のヒューバートと出会ったことから、アルバートは自らを偽り続けて生きることに悩み始める。

グレン・クローズが男装の女性を演じ、昨年のアカデミー賞で主演女優賞にノミネート等、演技を絶賛されていた本作、ようやく観ました。

19世紀のアイルランド
男性と偽りホテルの執事として働くアルバートに扮するのがグレン・クロース。
穏やかでいながら動作に無駄がなく、顧客の嗜好まで把握しているが、プライベートに鼻をつっこむこともなく、誰にも人望が厚いのは、冒頭の働き振りを観ていればわかります。
ホテルの従業員用の部屋を与えられ質素に暮らすアルバートは、お給料やチップをコツコツと貯め
自分で煙草屋を持つのが夢。
その夢に手が届きそうになった頃、ペンキ屋としてやってきたペイジ氏の出現により
アルバートは自分の将来や、夢のことを具体的に考えるようになるのです。

これから少しネタバレなので、次を読まれる方はご注意ください。



 

ここちょっとネタバレですが、実はペイジ氏も女性。
好きなシーンは二人で女装するシーン。・・女性だから女装とは言わないかなw
14歳から男装しかしてこなかったアルバートが女性の格好をするのだけど
こちらまで身体が固まりそうにカチコチに緊張しているのが可笑しい。
それでも街を抜け、浜辺につくと、その表情も、仕草さえも一歩ごとに女性に戻っていく
これには参りました。グレン・クロース本当に凄い!
彼女と対照的なのがジャネット・マクティ演じるミスター・ペイジ。
ペイジ氏も本当は女性のはずだけど、女装姿はどう見てもオカマの女装(笑)
多分ペイジ氏はゲイだったと思うのだけど、アルバート氏と二人の演技合わせて200点!!

アルバート氏はペイジ氏の影響もあり、自分の将来を真剣に考えます。
しかし、この時代、女性が夢を実現することはたやすいことではなく切なさが募ります。

でもこの映画が切ないだけで終わらないのは
アルバート氏が夢を追いかける姿の一途さ、幸せな未来を空想する彼女の
瞬間のときめき、輝きが愛しいからでしょうね。

ラストには物足りなさと虚しさを感じるのだけど、後日談を空想し自分なりのリベンジを楽しむもよし。
監督は『愛する人』のロドリゴ・ガルシア
出演者の演技のハーモニーも素晴らしい秀作でした。

★★★★