しまんちゅシネマ

映画ノート

『愛、アムール』:鳩の意味するものは?





新作の感想は、主にもうひとつのブログで書いてますが、
まだ日本公開になる前に記事をあげることが多く、ネタバレなしに書こうとすると、
深いところには入れないというジレンマに陥ります。

そこで、監督のインタビューで知ったことや
ネタバレ込みで自分で感じたことなどは、こちらで書いていこうと思うのです。

まずは、ミヒャエル・ハネケ監督の『愛、アムール
意味深に登場する「鳩」が何を意味してるんだろうと思った方も多いでしょう。
何かのメタファーなのかとあれこれ考えたことと思います。

そこで、ハネケ自身がどう言ってるかを知りたくてインタビュー動画を探しました。

ハネケによると、「鳩を何かのメタファーには使っていない。鳩は鳩」
「フランスには鳩が多いのだよ」とのこと。

なんだぁと思った方も多いかな。
でも、わざわざ映画に登場させたのには当然意味があるわけで

自分なりにその意味を考えてみました。
以下ネタバレを含みますので、未見の方はご遠慮ください。


ジャン=ルイ・トランティニャン演じるジョルジュは
介護の果てに妻を殺してしまいます。
それは妻の尊厳を守りたかったからでしょう。
でもなにより、人はいつかは死ぬ。
それが自然の摂理である と映画は言っているように思います。

ゆえに鳩は「閉じ込められた場所からの開放」を意味するのではないかしら。

妻に手をかけたあと、家に入り込んだ鳩にブランケットをかけて捕まえるシーン
ハネケの作品を観たことがあるかたは、ここで最悪の結果を想像したことでしょう。
私は一瞬物凄く緊張しました。
でも何もなかった。

ジョルジュは妻を殺し、妻を叩くシーンもあったけれど
彼は決して暴力的な人間ではないのです。

また、ブランケットに包んだ鳩を抱きしめるシーンに
命あるものへの慈しみと、自分の手で命をたたせてしまったことへの悔恨が滲みます。
何よりジョルジュは淋しかったのかもしれない。
鳩に愛する妻の温もりを求めたのかもしれませんね。

妻も同じようにジョルジュの温もりを求めたに違いない。
2人が再び出会い、連れ立って家を出るラストシーンに
窓から放たれる鳩の姿が重なります。

切なさと同時に何か安堵するものがあり、
無音のエンドロールに涙が溢れたのでした。

あくまで自分の解釈です


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