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映画ノート

【映画】被り物ファスベンダー 『FRANK -フランク-』 I love you all !



FRANK -フランク-(2014)イギリス/アイルランド
原題:FRANK
監督:レニー・アブラハムソン
出演:マイケル・ファスベンダー/ドーナル・グリーソン/マギー・ギレンホール
日本公開:2014/10/4

マイケル・ファスベンダーがはりぼての被り物姿で演じていて話題の『フランク』
公開中のミニシアター系の映画館が少し遠いので、DVDを待つつもりでしたが
アマゾンのインスタントビデオにあったのでレンタルして観たよ。

イギリスのコメディアン故クリス・シーヴィーがネタとして生んだ張りぼて頭の“フランク・サイドボトム”というキャラにインスパイアされた作品です。
てっきりアニメとの合体みたいに、主人公の容姿をデフォルメしたファンタジー映画なのかと思ったら違った。
ファスベンダー演じる主人公のフランクは被り物をしたまま日常生活を送るインディーズ系のミュージシャンで、しかも誰も彼の素顔を知らないという設定だったのね(汗)

監督はアイルランドの俊英レニー・アブラハムソン
映画はドーナル・グリーソン演じる新メンバージョンの目を通してフランクとバンドメンバーたちの音楽活動を追いながら、フランクはなぜ被り物を取らないかに迫ります。



張りぼて姿でフランクを演じているのはマイケル・ファスベンダー
首の傾げ方や動き、間の取り方なんかも絶妙でとにかく可笑しい。
実は、主役がこれだからと、オフビートなコメディと思い込んで観始め
実際、奇人変人の集まりみたいなバンドメンバーのオフビートなやりとりを爆笑しながら観てたんですが
次第にこれは実にシリアスな映画なんだと気づくことになりました。
というのも登場人物たちは心の病を抱えていて、その苦しみが切々と胸に迫ってくるから。

インタビューによるとファスベンダーはフランクのキャラ作りにダニエル・ジョンストンなんかを意識したらしい。
私は存じ上げないのでドキュメンタリーを観てみようと思ってるんですが
才気と狂気は表裏一体という天才たちはきっと少なくないのでしょう。
天才に限らず、いまどきは精神を病む人が多くなっています。
一旦心が壊れてしまうと、元に戻るのは簡単ではなく、抜け出そうともがくほどに後退してしまうこともあるということ。映画はそんな現実を正直に描きつつ、周囲のものの理解にもヒントを与えています。



バンドメンバー、クララを演じるマギー・ギレンホール他キャストの演技も秀逸。
おそらく一般人の目線の役割を果たすのはグリーソン演じるジョンでしょう。
フランクを理解し心を同じにすることは難しいかもしれないけれど
でも少なくともその痛みを知り、彼の世界を尊重することはできる。
それでいいのかな と思います。

バンドの奏でる音楽は好みが分かれそうですがw
ファスベンダーが歌やピアノを聴かせてくれるんだからファンにはたまらないはず。
ラストシーンには泣かされましたよ。
繊細で優しくて うん、これ好き。
I love you all !