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映画ノート

【映画】生還率0.01%の脱出劇『コロニア』

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コロニア
(2015)ドイツ・ルクセンブルク・フランス
原題:Colonia
監督/脚本:フロリアンガレンベルガー
出演:エマ・ワトソンダニエル・ブリュールリュール/ミカエル・ニクビスト/リチェンダ・ケアリー /ビッキー・クリープス
日本公開:2016/9/17


フライトでチリを訪れたドイツのキャビンアテンダントのレナ(エマ・ワトソン)は、恋人でジャーナリストのダニエル(ダニエル・ブリュール)とともに、チリの軍事クーデターに巻き込まれる。カメラを向けたダニエルが反体制勢力として捕られ、「コロニア・ディグニダ」という施設に連れていかれたことを知ったレナは恋人を助け出すため、単身コロニアに潜入する。

【感想
 
1973年に南米チリで勃発したクーデターのさなかに起きた事件をもとにした実録政治スリラー・・
というくくりですが、クーデター自体を描くものではないので、政治的な知識があまりなくても大丈夫。
映画は「コロニア・ディグニダ」に潜入したレナが体験する恐怖を描いていきます。


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慈善団体の体をなすこのコロニアが、ありきたりの宗教団体でないことを地元の人は知っている。
それでもレナはシスターを志願する名目で施設に入り、ダニエルを救うべく危険に身を投じるのです。

まずエマ・ワトソンダニエル・ブリュールの二人がいい。
映画の中、レナとダニエルには二つの再会シーンがあります。
一つはフライトでチリを訪れたレナがサプライズで街中のダニエルと再会するシーン
もう一つは、コロニア内での再会。

前者は遠距離恋愛カップルの久々の逢瀬をラブラブに
翌朝、裸にエプロン姿を見せるのはエマちゃんでなくブリュール君ですがw
後者では生きて逢えた喜びをかみしめながらも、誰にも気づかれないよう静かに手をつないで。
危険を冒して一層深まる愛をしっかり表現しています。

エマ・ワトソンはいつの間にこんな大人の女性になったんでしょう。
ブリュールとは12歳も歳が離れているのにそれを感じさせず
むしろ愛情の強さも、しっかり具合もダニエルより上というレナをきちんと演じてました。

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大半はコロニア内のすっぴん質素な恰好ながら、それでも美しく
黄色いスッチーコスチューム姿も可憐です。
  



コロニアを支配するミカエル・ニクビスト(『ミレニアム』シリーズ)も怪演でね。
ナチ残党恐ろしや。
徐々に明かされるコロニアの実態にはゾッとするものがあるし
たった一人でここまでやるところに、世界にはまだ同じような団体が潜んでいるんじゃないかと
背筋が凍る思いでした。

潜入何日目かの日数と、ことが起きる場所を施設内の青写真でチャプターのように見せる演出も気が利いている。
絶望と希望を交錯させながら、ラストに向かってスリルを加速させるエンタメ性も言うことなし。
ジャーナリズムの持つ力の大きさを実感すると同時に、そこにある犠牲も思い知らされる
なかなかの秀作でした。

日本公開は9月17日

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