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映画ノート

戦場のアリア


2005年(フランス/ドイツ/イギリス/ベルギー/ルーマニア)監督:クリスチャン・カリオン出演:ダイアン・クルーガー/ベンノ・フユルマン/ギョーム・カネ/ゲイリー・ルイス/ダニー・ブーン   ダニエル・ブリュール/リュカ・ベルヴォー/ベルナール・ル・コク/アレックス・ファーンズ【ストーリー】1914年、第一次大戦下のフランス北部デルソー。わずか数十メートルを隔てて築かれた2つの塹壕。一方には優勢に進めるドイツ軍。もう一方にはスコットランド軍の援軍を得てねばり強く戦うフランス軍。激しい戦闘が続き、両軍とも譲らぬままやがてクリスマスを迎えようとしていた。そしてクリスマスの日、ドイツ軍の塹壕にはたくさんのクリスマス・ツリーが飾られた。その日、花形テノール歌手のニコラウスは、皇太子の前で歌を披露することになり、本国からやって来たソプラノ歌手の妻と久々の再会を果たす。御前コンサートを終え塹壕に戻ってきたニコラウスは、ツリーを手にノーマンズ・ランドへ歩み出ると、素晴らしいテノールを響かせた。

戦場にもクリスマスを‥『戦場のアリア』

■感想
第一次世界大戦中、過酷な戦場において、一つの歌声をきっかけに一時的な休戦が実現したクリスマスの秘話を描いた作品です。

これ実話を基にしたお話なんですね。
1914年、第一次世界大戦のまっただ中にあって、熾烈なバトルが展開するフランス北部のデルソー。
誰もがクリスマスまでに戦争が終り、家に戻ることを夢見ていながらも、熾烈を極める闘いに疲労困憊する戦士たち。

そんな時、ドイツ軍に送られてきたたくさんのクリスマスツリー。それが奇跡の始まりだったのでしょうね。
くしくもその日、妻のソプラノ歌手の申し出で、ドイツ軍の兵士として戦地に派遣されたテノール歌手のニコラウスは
皇太子の前で妻とともに歌を披露。
その足で妻を伴い戦場に戻り、クリスマスツリーを片手に戦場で素晴らしい歌声を披露します。

すると最初戸惑っていた敵軍からも惜しみない拍手が起こり、各軍の話し合いの結果一時的な休戦が実現するんですね。
クリスマスならではの奇跡。
スコットランド軍の司祭の演奏するバグパイプの音色が厳かに響くとき、
誰もがなぜクリスマスに人を殺し合わなければならないのかと思ってしまうでしょう。

それまで敵同士だったドイツ軍とフランス軍、そしてフランスを援護するスコットランド軍の兵士たちが、
互いに酒をつぎあい、妻の写真を見せ合ったりしながら、交流する様子がなんとも清々しく感動的。

人間対人間ではこんなに仲良くできるはずなのに、なぜ国と国になるといがみ合うのか。
それでも、戦地で兄弟を亡くした一兵士の敵を憎む姿を描くことで、全ての兵士が同じ思いではなかったことを伝え、
能天気になりそうなシーンにも現実味を与えていたと思います。

ニコラウスの妻アナ役にダイアン・クルーガー
美しいアナの姿と歌声が、荒んだ兵士の心を和ませる役割があったのでしょうね。アナが戦場で歌うのが「アリア」
これが邦題になってるんですね。



ただ、個人的には、もっと兵士に安らぎを与えるような雰囲気をもった女優さんだったらもっと良かったな。
個人的な好みの問題ですが^^;

ぼくの大切なともだち』のダニー・ブーンが、一ドイツ兵を演じ、作品にホッとするユーモアを与えていました。
中尉役にギョーム・カネダニエル・ブリュールなどの若手(?)が起用されたところも、頭の柔らかい、いい人たちだったという感じで良かったです。

クリスマスに起こった奇跡という暖かい一面を味わう一方で、ラストでは人間の愚かさも見せるのも渋いところ。
地響きのように砲火の轟が絶え間ない戦場。不安と恐怖がつのるその音響効果も素晴らしかった。

やっぱり戦争映画なんです。


★★★*☆