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映画ノート

パフューム ある人殺しの物語


2006年(ドイツ/フランス/スペイン)監督:トム・ティクヴァ     原作:パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』(文藝春秋刊)出演:ベン・ウィショーダスティン・ホフマンアラン・リックマンレイチェル・ハード=ウッド   アンドレス・エレーラ/サイモン・チャンドラー/デヴィッド・コールダーナレーション:ジョン・ハート【ストーリー】18世紀のパリ。悪臭立ちこめる魚市場で一人の赤ん坊が産み落とされる。危うく捨てられかけた赤ん坊は、間一髪で拾われ、グルヌイユと名付けられて育児所に引き取られる。グルヌイユは友だちもいない孤独な子どもだったが、何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける超人的な嗅覚の持ち主だった。やがて青年となったグルヌイユは、ある時運命の香りと出会った。それは赤毛の少女の体から匂い立っていた。しかし彼は、怯えて悲鳴を上げようとした少女の口をふさぎ、誤って殺してしまう。以来、彼は少女の香りを再現することに執着し、香水調合師バルディーニに弟子入りするのだが…。
■感想
パトリック・ジュースキントのベストセラー『香水 ある人殺しの物語』を、ラン・ローラ・ラントム・ティクヴァ監督が映画化したサスペンス・ドラマです。

生まれながらにたぐいまれな嗅覚を持つ青年グルヌイユ(ベン・ウィショー)が、運命の香りを放つ少女に出会い、
同じ香りを再現すべく、殺人を重ねて行くというストーリーです。

臭いを題材にした小説を映像化するわけですから、難しかったのではと思うんですが、メイキングを観てみると、
監督はこれこそ映画にすべき作品だと感じ、映像のイメージもはっきりと思い浮かべることが出来たんだそうです。


美しい少女に出会い、その香りに魅せられたグルヌイユ。誤って少女を殺してしまった彼は、その香り作りにのめり込みます。その様子は残酷でありながらエロティック。しかし、その香りを求める彼の執念は、殺人という罪を重ねてしまうのです。

殺人者となった主人公の運命は、いかに。

正直、冒頭の魚市場のグロいシーンは観るに耐えないものがありました。
ところどころ「これって必要?」と思うような悪趣味ともいえる映像に引くところはあったものの、
物語の面白さには惹き込まれますね。

主演のベン・ウィショーはロンドンでシェークスピアを演じる役者だったそうで、地味ながらも力量のあるところをみせてくれます。しかしながら、ダスティン・ホフマンアラン・リックマンの二人が上手いんです。
前半、香水調合師を演じるダスティン・ホフマンがコミカルかつクラシカルにストーリーを盛り立て、
後半はアラン・リックマンが、殺人者から美しい娘を守ろうとする父親の深い愛と哀しみを演じきります。
この二人の存在がなかったら、この作品はこんなに重厚には仕上がらなかったでしょうね。



多くのエキストラを投入したクライマックスシーンに「ほえ?」とはなるものの、これはある意味圧巻です。

魅惑の香水を手にした主人公は、もはや世界を支配することも可能だったんですよね。
でも自分がむさぼる様に求めていたのは、少女への愛なんだと気付くグルヌイユ。

うーん、ラストはあまりにもファンタジーになりすぎな気がして、かえって物足りなさを感じたんだけど、、これってどうでしょ。ちょっと「へ?」じゃない?(笑)

それでも、力のある作品でしたね。見応えたっぷりで楽しめました。




★★★★☆