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映画ノート

普通の人々


1980年(米)監督:ロバート・レッドフォード出演:ドナルド・サザーランドメアリー・タイラー・ムーアティモシー・ハットン/ジャド・ハーシュエリザベス・マクガヴァン/M・エメット・ウォルシュ/ダイナ・マノフ/ジェームズ・B・シッキングアダム・ボールドウィン/フレドリック・レーン【ストーリー】平穏な日常生活を送っていた家族4人の家庭に、長男の事故死、続いて次男の自殺未遂という事件が起こる。この出来事を契機として、愛情と信頼によって固く結ばれていた筈の一家が、激しく揺り動かされ、目に見えない緊張が家の中を支配していく。そして映画は、3人がそれぞれの苦悩を抱えて噛み合わない歯車のようになったお互いの関係に直面する様子を描いてゆく。

80年代 プチ映画祭り 第4弾!

■感想
ロバート・レッドフォードは初めてメガホンをとったこの作品で、オスカーの作品賞、監督賞まで獲っちゃったんですね。

長男の事故死を契機に、壊れていく家族の様子を描いた本作は、なんといってもそれぞれの心理描写の巧みさが凄い。

タイトルは「普通の人々」。どこが普通なんだろうと不思議に思ってしまうのですが、
裕福で普通に幸せに過ごしているように見える一家も、実はこんなに崩壊しているということなのかな。

兄の死に責任を感じ、精神を病む次男(ティモシー・ハットン)。次男とも長男の死とも向き合うことが出来ない母親(メアリー・タイラー・ムーア)。そんな家族をなんとか平穏に収めようと気をもみながらも、実は何にも踏み込むことが出来ず、無力さに苛まれる父親(ドナルド・サザーランド)。
それぞれの思いが絡み合って、人を傷つけてしまう様子は痛々しく、家族が何処へ向かうのかと、終始緊張して観てしまいました。

やがて、心を開けるガールフレンドとの出会いや、カウンセリングによって、徐々に心を取り戻していく次男の様子に清々しさを感じる一方で、母親の心の傷は実は誰よりも深かったのかと愕然とする思いでもありました。

出演者はみんな素晴らしい演技でしたが、特に良かったのは、これが映画デビューのティモシー・ハットン
兄を亡くし、心の傷を抱え続ける青年の、繊細な感情を、若干20歳の彼がこんなに上手く演じてたんですね。
この演技でティモシーはアカデミー助演男優賞を受賞。助演というより、完璧に主演でしたけど。




レッドフォードは初監督にして、これだけシビアな話しを描ききったことは賞賛にも値しますね。
レッドフォードらしい美しい映像表現の一端も垣間みれます。

重いけれども、見事な心理描写に唸った作品でした。


★★★★☆