しまんちゅシネマ

映画ノート

リンカーン暗殺を法廷劇で描く『声をかくす人』

あのリンカーンヴァンパイアハンターだった!という『リンカーン秘密の書』の公開にあわせ
今週はリンカーンに関連する映画を観ていきます。
まずは、リンカーン暗殺にまつわる陰謀を法廷劇に仕上げた
ロバート・レッドフォード監督による『声をかくす人』。


声をかくす人
2011年(アメリカ)
原題:The Conspirator
監督:
ロバート・レッドフォード
出演:ジェームズ・マカヴォイロビン・ライト、ケヴィン・クライン
エヴァン・レイチェル・ウッドダニー・ヒューストン



去年の4月の公開時に劇場鑑賞していた作品ですが、記事を書かずじまいになってました。

南北戦争終了間際の1865年、リンカーン大統領は観劇中に撃たれ死亡。
やがて犯人である俳優のブースほか同志である南部の若者数人と
暗殺の密議が行われたとする下宿屋を経営するメアリー・サラットが捕まり
裁判にかけられることになります。
裁判の行方は、、という話。




メアリーを演じるのがロビン・ライト
息子を守りたい気持ちから口を閉ざすメアリーを
ノーメークでストイックに演じています。
裁判でメアリーの弁護を担当エイクンを演じるのがジェームズ・マカヴォイ
戦争を闘った英雄でもある彼は弁護士としてはこれが初のトライアル。
誰もがメアリーの処刑を望む中、エイクン自身も有罪を信じていたのですが、
メアリーと接するうちに、メアリーの無実の可能性を感じるようになり、
懸命に弁護します。求めるものは真実のみ。
同時に、彼は政府の姿勢に疑問を感じ始めるんですね。

正義感に燃える若き弁護士エイクンを演じたマカヴォイの
真摯な演技が光る作品です。
史実を基にしていることから、裁判の結果も明らかなのだけど
映画を楽しむためにここでは言及しません。
ただ、終盤にきてタイトルの『陰謀者』というのが、
リンカーン暗殺者たちを差すだけでなく、
もうひとつ意味を重ねていることに気づくことになりました。

「戦争の時代にあって、法は沈黙を守ることもある」
という印象的な台詞に「ノー」を突きつけ
報復と正義を履き違えてはいけないというストレートなメッセージを託す
社会派レッドフォードらしい作品ですね。見ごたえがありました。

ちなみにこの裁判のあと、市民による陪審員制度が始まったそうです。

日本公開は10月

★★★★