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映画ノート

冬の旅


1985年(フランス)監督:アニエス・ヴァルダ出演:サンドリーヌ・ボネール/マーシャ・メリル/ステファン・フレイス/ヨランド・モローパトリック・レプシンスキー/マルト・ジャルニアス【ストーリー】少女がひとり、行き倒れて寒さで死んだ。誰に知られる事もなく、共同墓地に葬られた少女モナ。彼女が誰であったのか、それは彼女が死ぬ前の数週間に彼女と出会った人々の証言を聞くほかなかった。バイクの青年たち、ガソリン・スタンドの主人、さすらいの青年ダヴィッド、山にこもって山羊を飼う元学生運動のリーダー、病んで死んでゆくプラタナスを研究する女教授マダム・ランディエなど様々な人々の証言を元に、彼女の軌跡を辿ってゆく……

ヴェネチア映画祭特集 3本目 第42回グランプリ『冬の旅』

■感想
寒い日の朝、葡萄畑の側溝で、行き倒れで死んだ少女の遺体が発見される。
少女は誰なのか。なぜ一人死んでいったのか。

少女と出会った人たちの証言を聞く形で、少女の死ぬまでの数週間が再現され
そこで明らかになるのは‥。

これは、一人の少女の死から、その孤独と自由を求めることの難しさを描く、実話を元にした作品です。

少女の名前はモナ18歳。
モナと関わった人の中には食べ物を与えたり、寝る場所を提供したり、中にはセックスをともにするものまでいた。
けれども証言者の関わりはどれも断片的で、誰一人として、本当のモナを知る人などいない。
証言が進むごとに、モナの孤独が浮かび上がってくるのが切ないです。

でも映画の一部始終を観ることの出来る自分が、モナを理解出来たかというとそれも難しい。
中流階級に生れ、一通りの教育も受けてきたモナが、なぜ孤独な旅を続けなければならなかったのか
映画の中では答えはないのです。

規則に縛られることを嫌い、自由を求めたモナ。
働く能力がありながら仕事もせず、人から受けた親切に感謝もできない。
どうして働かないの?と聞かれ、路上でこうしてワインをもらって飲む方がマシとうそぶく。
それが本当の自由なのか?と考えてしまう私は、モナの目からみたら
規則に縛られ、自分を抑えて生きているあわれな人間なのかな。



モナはどうしようもなく、いけずな女なワケではなく
老女とワインを酌み交わし、あどけなく笑い合ったり、無邪気で陽気な一面も見せる。
けれども概して、知識人、モナに規制を求めるものには攻撃的に背を向ける。



これは自由を知らない私には、きっと語れない作品ですね。
そして何にもとらわれない、究極の自由を求めたモナに突き付けられる現実の厳しさに
自由であることの限界を感じる作品でした。

allcinemaの解説者が絶賛してるように、自由と孤独をとことん描いている点には敬意を表すけれど
見終わった後には、ひたすら寒い風が吹き抜けたな。。

ベネチア映画祭 金獅子賞、国際評論家賞受賞
モナを演じたサンドリーヌ・ボネールは複数の映画祭で女優賞を獲得しています。


★★★*☆