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映画ノート

トリコロール/青の愛


1993年(フランス/ポーランド/スイス)監督:クシシュトフ・キエシロフスキー出演:ジュリエット・ビノシュ/ブノワ・レジャン/エレーヌ・ヴァンサン/フローレンス・ペルネルシャルロット・ヴェリ/エマニュエル・リヴァ【ストーリー】音楽家の夫を事故で失ったジュリーは、全ての財産を処分しようとした。過去から離れて暮らそうとしたのだった。だがそのとき、彼女は、夫の子を身ごもっている愛人と出会う……。

ヴェネチア映画祭特集 2本目 第50回グランプリ『トリコロール/青の愛』

■感想
ポーランドクシシュトフ・キエシロフスキーによるトリコロール3部作の最初の作品。
第50回ヴェネチア映画祭では、金獅子賞、女優賞、撮影賞を受賞しています。

著名な作曲家である夫と娘を交通事故でなくしたジュリー(ジュリエット・ビノシュ)。
一人生き残った彼女は、哀しみのどん底にあるはずなのに、声をあげて泣くことが出来ない。

事故のショックということだけでなく、どこか虚ろ。
部屋に吊るされた青色のガラスのモビールの、にじんだような儚い煌めきが
ジュリーの心を映し出しているようでした。



事故の後に知った夫の愛人の存在。
どうしても確かめたかったのは、そこに愛があったのか、ということ。

妻でありながら、愛されず
音楽の才能がありながら、夫の影武者となり
実の母親の記憶からも排除されてしまった自分

どこにも自分の存在を見出せないでいたジュリーが、
過去に決別し、新たな自分を見つめようとする時
初めて彼女は、夫の死を受け入れ涙を流します。

一人の女性の再生の物語。
ジュリエット・ビノシュは流石の演技。

青い閃光とともにジュリーの頭を駆け巡る音楽も
ブルーを基調に登場人物の心を投影した映像も、こだわりがありとても素晴らしい。

キエシロフスキー恐るべしと感じた作品でした。


★★★★*