しまんちゅシネマ

映画ノート

トリコロール/白の愛


1994年(ポーランド/フランス)
監督:クシシュトフ・キエシロフスキー
出演:ズビグニエフ・ザマホフスキー
ジュリー・デルピー
 
 

■感想
さて、世界の巨匠シリーズ4本目
 
監督の作品は残念ながらまだ『トリコロール/青の愛』しか観てないのですが
今日はその三部作のひとつ『トリコロール/白の愛』を。
 
ポーランド人のカロル(ズビグニェフ・ザマホフスキ)は、フランス人の妻・ドミニク(ジュリー・デルピー)から性的不能を理由に離婚を付きつけられる。文無しとなり途方に暮れていたカロルは、地下鉄で知り合ったポーランド人ミコワイの手を借りなんとかポーランドに帰る。
彼は危険な事業を成功させ、元妻を取り戻すため計画を企てるが……。
 
監督はこの後『赤の愛』でトリコロール三部作を完成させ、監督業を廃業されてるんですね。
そしてその2年後、50歳半ばにして心臓発作でこの世を去っています。
監督廃業後に脚本を手がけたのが、ケイト・ブランシェット主演の『ヘブン』など天国三部作。
監督として成功しながら、何か「死」を深く意識していたのか・・・
今回観た『トリコロール/白の愛』でも、「死」はキーワードになっていました。
 
命の保障はないのに危険な仕事に手を出す主人公。
偶然目にした他人の葬儀から、自分の「死」を偽ることを思いつき、
替え玉にロシア人の「死体」を手に入れる。。そこにはさまざまな「死」の形があります。
一方、富も地位も手にしながら、「死」を渇望する友人を描いているのが印象的で
これは監督自身の姿に重なるものかもしれません。
 
別れた妻への復習を描くブラックコメディの形をとりながら
実は妻への深い愛を描くラブストーリー。
根底には監督の死生観を感じる作品でした。
 
主人公が滝のような涙を流すシーンで終わるラスト
観るものによって解釈は異なるかもだけど、多分ハッピーエンド。。。だよね?

頼りなかったカロルが、妻と対等になるべくフランス語を身につけ別人のようにたくましくなっていく
主演のズブグニエフ・ザマホフスキー(ポーランドの人の名前は絶対に覚えられないですが・・)は
巧いですね。
妻ドミニクを演じたジュリー・デルピーもまだ若くて可愛い~。
彼女は「白」というイメージがぴったり。
 
「白」は鳩やウェディング・ドレスや、Hで頂点に達するイメージやらw
はたまた原題のようにblancとして考えると、ミコワイを撃つシーンなど。。(ちょっとネタバレ)
さまざまなシーンで使われていたけど、
「全てを捨ててでも守りたい純粋な思い」が白なのかな~などと勝手に解釈しました(笑)
 
音楽がとにかく美しく、映画を引き立てますね。
主人公が必死に愛を取り戻そうとする過程はちょっとエキセントリックだけど
根無し草で基盤を持たないカルロはポーランド人を象徴するものだったかも。
巨匠の腕が冴える演出が随所に見られやっぱり好きな作品でした。