しまんちゅシネマ

映画ノート

処女の生き血を求めた『血の伯爵夫人』

さて、今月はフランス映画を観ていきます。
ますは、2009年のフランス映画祭で『伯爵夫人』として上映された本作を。
『恋人までのディスタンス』のジュリー・デルピーが監督・脚本・製作・音楽・主演を務め
吸血鬼伝説のモデルにもなった伯爵夫人を描く伝記作品です。



 
血の伯爵夫人
 
2009年(ドイツ/フランス)
ハンガリーの有力貴族の娘として生まれたエリザベートは15歳でナーダジュディ伯爵と結婚し、3人の子をもうける。無双の強さを見せる優秀な武人である夫と、賢く巧みに荘園を管理・経営するエリザベートは、国中で最も恐れられ、かつ尊敬される夫婦となる。その後、夫が急死すると、エリザベートは21歳の青年イシュトヴァンと愛し合うようになるが、彼の父親であるトゥルゾ伯爵によって二人の仲は引き裂かれてしまう。(wikiより)

ジュリー・デルピーの監督作品を観るのは、これが初めてなんですが
連続殺人犯として生きた実在の伯爵夫人の伝記を、悲しいゴシック・ホラーとして
手堅く描いていて感心しました。

16世紀のハンガリーの貴族であったエリザ・ベートが血の伯爵夫人という異名を持つのは
彼女が何百人という若者を殺害し、生き血を絞っては血の風呂に身体を浸したり
侍女の膣や指を切断したり、肉を食べたりと残虐行為を繰り返した人だからだそうで
伝説的なシリアル・キラー夫人だったんですね(汗)

私の中でホンワカおっとり系の美女だったデルピーが
いつの間にか熟女となり、しかも知的で高圧的な夫人を
見事に演じていて、ちょっとビックリ。




噂される残虐行為をそのまま描写するとグロ恐ろしいホラーになるところですが
デルピーの描き方は、愛する青年イシュトヴァン(ダニエル・ブリュール)との仲を
引き裂かれ、若さと美貌に執着するようになった夫人の悲しみが前面に出ているのが
同じ人物をモデルに描いた他のホラー作品と違うところでしょうか。
イシュトヴァンの夫人への愛も本物だったという描き方が
物悲しいロマンスとして余韻を残します。

驚きの実話をベースに、老いや喪失の哀しみという普遍的なテーマで描くところに
女性監督作品ならではの味わいがありました。

と言っても、うぎゃっと思うような痛そうなシーンもちゃんとあって
そもそもこういう題材を選ぶところが嬉しいじゃないですかw
面白かったですよ。
デルピー作品、これからも注目します。

★★★★