しまんちゅシネマ

映画ノート

ふたりのベロニカ


1991年(ポーランド/フランス)
出演:イレーヌ・ジャコブ
フィリップ・ヴォルテール
サンドリーヌ・デュマ
 

■感想
世界の巨匠シリーズ5本目
今日も昨日に引き続きポーランドの巨匠クシシュトフ・キエロフスキー監督の作品ですが
ポーランドと言えば、大統領の専用機が墜落し、大統領夫妻含む132人全員が死亡したと
ニュースが入り驚いています。
専用機は「カティンの森事件」の慰霊祭に向かう途中だったというのが、なんとも哀しい。
アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』(2007)でも描かれていたこの事件のことを知ることは、
大統領はじめ、関係者の心を休めるものかもしれません。ご冥福をお祈りします。
 
さて、キエロフスキー監督作品、今日はふたりのベロニカです。
タイトルのとおり、ふたりのベロニカが登場するのですが
一人はポーランドで生まれ育ち、一人はフランスで生まれ育ったベロニカ。
(ただし名前のつづりは WeronikaとV?roniqueとなってました)
不思議なことに、姿かたちも生年月日も、心臓に持病があることも同じ
音楽を愛すことも同じで、ポーランドのベロニカは声楽を学び
フランスのベロニカは小学校で音楽教師をしています。
 
ふたりには出生の秘密があり、実は双子!というオチに違いない、と思ったのだけどそうではない。
じゃあ何?と思うのだけど、ただただ神秘的なお話として描かれてるんですよね。
 
全く別の国に暮らす二人ですが、それぞれに「もうひとりの自分」を意識しあっています。
ある日、ポーランドのベロニカは、コンサートの舞台で歌っている最中に激しい胸の痛みに襲われ
そのまま帰らぬ人となってしまうのだけど、その瞬間フランスのベロニカは
激しい喪失感に、理由も分からないまま涙を流すのでした。
 
よく、双子の片割れが危ない目に遭うと、もう片一方がその危険を察知したり、
離れていても同じ痛みを感じるということを聞いた事があります。

この映画のふたりのベロニカはまさにそんな存在
人間はもろく壊れやすい。だから神は互いを補いあうために、同じ人間をお創りになった。。
もしかしたら、自分と全く同じ人間が、どこかの国に存在するのかもしれません。
 
映画はその神秘性が引き合わせたラブストーリーでもあります。
ベロニカの歌声も美しく、コンサートで彼女が歌う曲は、フランスのベロニカが学校で生徒に聞かせたり
後に出会う男性の人形劇で使われていた、、これもまた運命的なのです。
 
ベロニカを演じたイレーヌ・ジャコブカンヌで女優賞獲得
彼女は後に『トリコロール/赤の愛』にも主演してるんですね。
監督の最後のミューズだったんだ。とにかく綺麗!
 
イレーヌのみずみずしさと主題歌の物悲しい旋律が心に残る
なんとも不思議で美しい作品でした。