しまんちゅシネマ

映画ノート

切腹

 
 
1962年(日本)
監督:小林正樹
出演:仲代達矢岩下志麻石浜朗/稲葉義男/三國連太郎三島雅夫丹波哲郎
 
■感想
怪談』の小林正樹監督、仲代達矢主演の異色時代劇です。
寛永7年、仲代達也演じる素浪人津雲半四郎(仲代達矢)は、
井伊家の屋敷を訪ね、庭先での切腹を願い出る。
井伊家では、つい先日も切腹を申し出てきた若者に対処したばかり。
この頃、生活に困った浪人が屋敷での切腹を申し出ることが風潮となっていた。
屋敷では敷地内で切腹など迷惑と、多少の金銭を渡して引き取らせることになり
浪人の間で、金銭目当てのたかりが流行していたのである。
 
さて、井伊家の家老斎藤勘解由(三国連太郎)は、津雲がビビッて逃げ帰ることを期待し、
その若浪人の切腹の様子を話してきかせる。
しかし、津雲の決心は固いらしい。他のたかり浪人とは様子が違うようだ。
津雲は介添え人に3人の名を挙げ、到着を待つ間、自分の身の上話をはじめる。。
 
いや、これは凄かった。
何が異色って、これ、切腹を申し出る二人の素浪人の姿を通じ
武士社会末端の生活の困窮、虚飾にまみれた武家の精神などを鋭くえぐる
社会派な一面をもった作品となってるんですよね~。
 
若浪人の切腹に至るまでの様子は心理サスペンスともいうべきもの。
見栄を捨てて、金銭を求めざるを得ない浪人の悲哀、
武士道の極みを見せる壮絶なる終盤の展開、その構成力の高さにもうならされます。
 
仲代達也って、こんな渋い役者だったんですね。
丹波哲郎岩下志麻、志摩、石浜朗三國連太郎
超豪華キャストが、誰もぴたりと役を演じ、映画を引き締めます。
 
時代劇でありながら、栄えるものの奢り、虚栄、その立場になってみなければ
人の心はわからないのだということなど、普遍的なことがらを描いていて心を打たれます。
 
カンヌで審査員特別賞受賞
時代を超えた名作でしょうね。お見事でした。