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映画ノート

シドニー・ルメット監督追悼『質屋』

 
 
シドニー・ルメット監督追悼の意を込めて鑑賞。
ニューヨークに暮らすユダヤ人のトラウマを描く作品です。
 
質屋(1964) アメリカ 
監督:シドニー・ルメット
出演:ロッド・スタイガー/ジェラルディン・フィッツジェラルド/ブロック・ピータース/セルマ・オリヴァー/ジェイミー・サンチェス
 
■感想
冒頭、明るい陽射しの中、川辺でピクニックを楽しむ家族が描かれます
一家の主である男の顔がこわばった次の瞬間、画面は変わり、
ピクニックのシーンは、庭でまどろむ男の25年前の回想であったことを知ることになります。
 
 
 
男は、元大学教授のソル(ロッド・スタイガー)。
今はニューヨークで質屋を営むその表情は暗く、
店を訪れる客にも、質だねにも何の感情を示しません。
 
時折ソル襲うフラッシュバックと、腕に刻印された数字から
彼がホロコーストを経験したユダヤ人であることが分かってくるのですね。
 
ユダヤ人というだけで家族を奪われた男のトラウマと悲しみが延々と描かれる映画です。
監督の両親はポーランドユダヤ人、
監督自身も幼少の頃にニューヨークに移り住んだとのことで、当然ホロコーストと無関係ではなかったでしょう。
この映画は、監督が撮るべくして撮ったと言える作品かもしれません。
 
ラストシーンは壮絶で悲しいのですが、
彼はある事件を通し、質屋に訪れる顧客たち全てに暮らしがあり、
そこに生があることに気づくことになるのですね。
 
ソルがフラフラと街を歩き出すラストシーンに
彼の新たな人生を願い、涙が溢れました。
 
モノクロ、ドキュメンタリー風の映像にかぶさるクインシー・ジョーンズが渋い!
 
ニューヨークに暮らすユダヤ人はじめ移民たち、黒人の娼婦やギャングなど
時代が透けて見えるのも興味深いです。