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映画ノート

ある過去の行方




今日は今週末日本公開の作品から
『別離』のアスガー・ファルハディが脚本、監督を務めたフランス映画。
『アーティスト』のベレニス・ベジョが主演し、カンヌで女優賞を受賞しています。
ある過去の行方(2013)フランス/イタリア
原題:Le Passe/The Past
監督:アスガー・ファルハディ
出演:ベレニス・ベジョ/アリ・モサファ/タハール・ラヒム/ポリーヌ・ビュルレ
日本公開:2014/4/19
夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。マリーはアーマドに前の夫との子供リュシーとの関係が上手くいっていないことを告白し、アーマドはリュシーの話を聴くが、リュシーの口から思わぬ事実を知らされ・・


 『別離』で宗教や異文化を交えた複雑な人間模様を展開してみせたアスガー・ファルハディ監督。
本作でも正式に離婚の手続きを踏もうとする夫婦の過去を紐解くことで、彼らの愛憎がもたらす因縁をミステリアスに炙り出すことに成功しています。

 ヒロイン、マリーを演じるのは『アーティスト』とはまるで違った雰囲気のベレニス・ベジョ
4年前に彼女の元を去ったイラン人の夫アーマド(アリ・モサファ)を「離婚の手続き」のため呼び出し、
子持ちの恋人サミール(タハール・ラヒム)と同棲中の家に寝泊りさせる。
その「無頓着」とも思える行動の裏には、マリーのアーマドへの未練や執着があることに気づくことになる。
家が「ペンキ塗りなおし中」なのは、その思いへの裏返し、アマードへのあてつけにも見えてくる。
さらに、サミールには自殺未遂で昏睡状態の妻がいることも判ってくると
自体は妻の自殺の原因をめぐるミステリーへと展開するんですが、
それがまた、サミールの周辺の愛憎をえぐる多重構造になっていくのが深いんですよ。



 穏やかで誰にも優しいアーマドは好印象で、彼には何の罪もないように見えるけれど
結局はどうしてもパリで暮らすことが出来なかった移民である彼の本質が全ての悪を生んだのかもしれない。
そのことは「壊れたスーツケース」からのぞいていたお土産を、子供たちが盗むというエピソードで、さり気に示唆されてるようにも思いましたね。
スーツケースが壊れたことはアマードのせいではない
けれどもそのことが思わぬ「罪」を生むこともあるということ。
子役も上手かった



 最後は監督らしく、全てを語りません。
それでも、過去の全てが明らかになった今、ようやく新しい未来が始まるのだと
そんな風に思いました。
アスガー・ファルハディ監督やっぱりうまいわ。