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映画ノート

ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー (1981)

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ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー
Thief 

マイケル・マンの長編デビュー作

カーン演じるフランクは、昼間は中古車センターのオーナー、夜は必殺金庫破りの二つの顔を持つ男。
組織に所属せず、服役中に名人オクラから学んだやり方で仲間と仕事をこなしてきたフランクだが
そろそろ家庭をもって静かな余生を送りたいと思っている。
夢に一歩近づいたと思った矢先、フランクの仕事ぶりを見初めたマフィアに声をかけられ・・


金庫破りの一部始終を見せるところからまずひきこまれる。
緻密に警報を解除した後は、解体工事現場さながらに力業で破壊する!
技術顧問に本物の金庫破りを雇ったというから、リアリティは折り紙付きで
金庫の中から近接で撮った映像もカッコいい。
Thief 01
仕事を終え夜の街へとまぎれいくスタイリッシュな演出に『ドライブ』を思いだしたが
マイケル・マンはデビュー作からその様式美を確立させていたんだと驚く。

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しかし、本作ではスタイリッシュと真逆に思える任侠臭さがあって、そこがまたいい。
40ドルを盗んだことから始まったフランクの転落人生。
アウトローとして生きてきた彼がようやく人間らしい暮らしに落ち着こうとするとき
ささやかな夢は壊される。

以下結末に触れるので未見の方はご注意ください。




 マフィアのレオに大仕事のピンはねに抗議したフランクは、相棒を殺され、一生の服従を言い渡される。
怒りに狂ったフランクは妻子に有り金を渡し逃亡させ、家も店も爆破する。
CGなしと思われるこの爆破シーンが迫力だ。

全てをなくしたフランクが敵陣に乗り込み、銃撃戦の末・・
生きていたのは実は意外に感じたのだが
思えば死んでしまうよりも、生き抜く方が過酷かもしれない。
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フランクには夢があった
写真のコラージュに集めたその夢はまるでジグソーパズルのようだ。
妻と息子を得てパズルを埋めようとするフランク。
だが、オクラというピースをなくした時点で、フランクの夢は壊れ始めていた。

フランクはその後妻子の元へ帰るのか
答えはノーだと思う。
オクラの死に対する異常なまでの喪失感と、家に盗聴器を仕掛けられた時の落胆ぶりに
フランクのパズルへの執着を感じたし、彼が再び夢を追い求める姿をどうしても想像できない。

抜け殻となったフランクの明日がどどれほど過酷なものかと想像すると泣けてくる。
ドライで悲しい。だけどこれほどカッコいい映画もない。




映画データ
製作年:1981年
製作国:アメリ
監督/脚本:マイケル・マン
出演:ジェームズ・カーン
   チューズデイ・ウェルド
   ウィリー・ネルソン
   ジェームズ・ベルーシ
   ロバート・プロスキー